前回記事(参照)で、「マイノリティー出資におけるPMIのさじ加減は相手と“両想い”か“片想い”かによって全く異なってくる」ということをお伝えした。では、どのようにして“両想い”か“片想い”かを見極めるのか。今回は、マイノリティー出資のプレPMIの段階で留意すべきポイントをお伝えしたい。

いつの間にか譲歩させられているかも?

最初から、「おたくにマジョリティーを渡す気はないです」とか、「そのシナジー実現には興味ないです」などとはっきり言ってくれれば、「片想い」であることは自明だ。しかし、ディール段階では、相手もより良い条件でディールを成立させたいので、口では色よいことを言ってくる。特に、日本人は欧米人のトークの上手さに翻弄され、相手の本音を見抜くのは苦手だと感じる。

見せかけの「両想い」に翻弄された事例を一つご紹介する。

ある企業(X社)が欧米系の企業(Y社)へマイノリティー出資した際、当初Y社社長とは、将来的なマジョリティー取得や、クロスセル、新規事業参入における協業を口頭で合意していた。しかし、ディールが進むにつれ、「将来的なマジョリティー取得への言及は契約書には明記しないでくれ」、「駐在員5名派遣を2名にしてくれ」、「協業事項には、XXの条件をつけてくれ」など譲歩の打診が次々と出てくるようになった。X社は、当初のY社社長との合意を信じ、その譲歩に応じた。その案件が、競争入札だったことに加え、社内では「Y社が当該領域の唯一のターゲット」と目されていたことも譲歩に応じた背景にあった。

その後どうなったか。

蓋を開けてみれば、シナジーを発現させたい事業領域の事業責任者には全く話が通っておらず、社長に言っても、「あとは実務部隊で話しながらやってくれ」の一点張り。「両想い」の前提で描いていた事業計画は早々に崩れ、シナジー創出以前の信頼関係構築からまた始めなければいけなくなった。

つまり、X社は盲目的にY社を“信じようとした”結果、見せかけの「両想い」を見破ることができなかったのだ。

「譲れないもの」を明確にすべし

長い付き合いで信頼関係が構築されていればよいが、本音を見極めるのは、ディールというある種異質な状況の中では困難とも言える。だからこそ、自分たちがその案件で絶対に譲ってはいけないものを明確にし、契約上明文化することは必須だ。マジョリティー出資でも当然同じことが言えるが、マイノリティー出資の場合、増資のタイミングでもない限り、自分たちの権限範囲の拡大を主張することは容易でないため、より重要性が増すとも言える。

以下に、「譲れないもの」を明確にするうえでのステップと具体例を示したい。

(1) 出資目的を明確にする
   B社への出資により、成長著しいXX分野への新規参入を狙う

(2) 出資目的を達成するための戦略
     自社の技術を活かし、B社既存商品の改良、新商品の開発において協業
     XX分野で自社ブランドを浸透させ、消費者への認知度を高め、本格参入への土台を作る  

(3) 戦略仮説を実現する上での要件を設定する
    a)  B社商品がXX分野において競争優位性がある
    b)  自社技術をB社商品へ活かすことができること 
    c)  自社の技術者をB社のR&Dへ派遣できること
    d)  B社商品に自社技術を使用していることを対外的に公表できること

(4) 要件の中で、その要件を具備するために担保すべき権利 (=譲れないもの)を特定
     a) ( ⇒基本的にはビジネスDDで精査)
     b)  B社商品開発方針に対する自社の発言権確保
     c)  自社の技術者X名をB社のR&Dへ派遣できる権利
     d)   自社技術の使用を対外的にアピールできる権利

なお、(4) をいかに契約上落とし込んでいくかは弁護士との協議が必要であるが、ビジネスサイドから、「譲れないもの」を予め弁護士に伝えることで、弁護士側でも交渉の優先順位をつけやすくなるというメリットもあるだろう。