今回のコラムでは、前回と同じ水平統合型(同業買収)ですが、期待される主な効果がコスト効率化となる、「業界再編型水平統合のM&A」について考察してみたいと思います。

図1:ポートフォリオ変革手段としてのM&A類型

業界再編型水平統合M&Aの目的

業界再編型のM&Aは、ポートフォリオ上では「Cash Cow」の事業にも、「Dogs」の事業にも適用され得ると考えられます。意図される主たる効果はコスト合理化、つまりコストシナジーであるためです。

成熟化した国内市場において、1990年代後半から2000年代前半にかけて進んだ、金融機関の統廃合などが典型です。また、近年では国際的な競争力が低下した電気・家電系メーカーにおいても、国内市場の規模に比してプレーヤーの数が多すぎることが指摘されています。

こうした指摘の前提には、統合によりコスト効率化を図らないとグローバルで生き残ることができないという危機意識があると思われます。

■トランザクションの特徴・留意点、ディールブレイクイシュー

このような案件は、限られた成熟市場内でのパイの奪いあいの中で起きることが多く、必然的に業界構造に大きく影響を与えると考えられます。つまり、1位と2位が統合して下位を突き放すのか、3位と4位が統合して上位の地位を脅かすのか、組む相手選びが、そのまま統合後の業界ポジションを定義します。

したがって、常に相手の胸の内、出方をを読みながら、熾烈な駆け引きが行われるディールになりがちです。一国の産業政策に影響がでるような大きな事案の場合は、国策との兼ね合いで政府による介入や指導が起きやすいのもこのパターンであるように思われます。

案件の進み方としては、台風の眼となるキープレーヤーをどこが買収するか、という入札合戦も当然あり得ます。しかし、どちらかというと、アドバイザーよりも、当事者トップ同士が直接交渉(統合後のポストも含め)してまとまることが多いようにも思われます。

■取引スキーム

業界再編型のM&Aは、買収後の経営体制を見据えて、ホールディングカンパニーを設立するための株式移転スキームや、株式交換といった非現金対価による組織再編スキームが検討されることが、他のタイプのM&Aより多くなるように思われます。これは(特に日本においては)どちらがどちらを買った(支配した)という上下関係が明確になることを避け、できるだけ「対等」な取引である、ということをアピールしたい狙いもあるかもしれません。

PMIのポイント

統合の主眼がコストシナジーの実現であるため、買収後も相当な困難が伴うと思われます。特に重複する拠点の統廃合や、重複するポストの整理など、雇用に直結する判断も多く、相当な痛みをともなう決断が他にも増して必要なM&Aと言えそうです。こうした領域の第一人者の方からは、なによりもスピードが大事だと聞いたことがあります。

かつて銀行出身の先輩から、社名はどっちを先にするかから始まり、席の並びをどうするか、一番眺めのよい角部屋をどちら出身の部長が使うかなど、大きなことから小さなことまで、本当に大変だったという話を聞いたことがあります。リアル半沢直樹の世界です。

このほかにも、コスト効率化のためには、システム統合をどうするか、といった問題も他のパターンに比べて多くなるようですが、いずれにしても短期決戦で成果を出さないと、改革疲れが組織に広がってしまうようです。

今回のコラムでは、「業界再編型の水平統合M&A」について考察しました。次回は、「垂直統合型(バリューチェーン強化・拡大型)のM&A」について考察してみたいと思います。

本記事は、IGNiTE CAPITAL PARTNERS ホームページより転載しております