仏ルノーは日産株を「なぜ」「どれだけ」売却するのか?

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EVシフトが皮肉にもEV先発組の日産との関係見直しの契機に(Photo By Reuters)

ついに仏ルノーに見放されるのか?ルノーが保有する日産自動車<7201>株の売却を検討しているとの報道が世界を駆け巡った。これを受けて4月25日の日産株は前営業日比で5.05%下がり、509円80銭に。同日の日経平均株価の下げ幅1.90%を大きく下回った。問題はルノーがどのぐらいの日産株を売却するかだ。

日産に影響力を残したいなら売却額は2150億円

現時点の報道では「売却額は数十億ユーロ(数千億円)に上る可能性がある」との説が出ている。一口に数千億円と言われてても1000億円から9000億円までと幅が大きい。どのあたりが着地点なのだろうか?まず、ルノーが保有する日産株の総額はいくらなのか?

ルノーの持ち株比率は43.4%。25日時点では9331億円相当の日産株を保有していることになる。しかし、全株を一気に手放す可能性は低い。日産への影響力を残すためには、特別決議を単独で阻止することが可能になる33.4%以上の株式を保有する必要がある。

そうなると、売却できる株式は10%。売却で得られる金額は2150億円だ。このあたりが最も有力な「落とし所」だろう。しかし、報道によればルノーは日産株を売却した資金で電気自動車(EV)事業を強化するという。EVといえば、世界に先駆けて2010年に量産型乗用EV「リーフ」を発売した日産の技術力がある。

その日産の株を大量に売却するということは、同社のEV技術に期待をかけていないことを意味する。米環境技術ニュースサイト「CleanTechnica」によると、2021年のEV世界販売台数(プラグインハイブリッド車も含む)はルノーが13万6750台。これに対して日産は1万843台と、12分の1以下にすぎない。


「EVシフト」にフォーカスなら、5000億円超の株放出も

日産は「リーフ」がカルロス・ゴーン元会長主導で商品化され、販売台数も伸びなかったことからEVに距離を置き、シリーズ方式のハイブリッドシステム「e-POWER」搭載車に力を入れた。その結果、EVの技術開発力や生産力、バッテリーなどの調達力で後発の海外メーカーに追い抜かれ、大差がついた格好だ。

EVで組むメリットが小さいとしたら、日産とのパートナーシップは緩やかでよい。日産以外の自動車メーカーとEVで組むのならば、むしろ現在の強固な関係は足を引っ張るマイナス材料になる。EVシフトが加速する中、ルノーとしては日産の持ち株比率をさらに引き下げたいのが本音だろう。

ルノーが持ち株比率を20%に引き下げれば、売却で得られる金額は5031億円と5000億円の大台を超える。これだけの株式数となると、同社は日産に自社株を引き取らせるだろう。EVで伸びしろが小さい日産に買収の旨味(うまみ)は少なく、第三者への売却は「買い叩かれる」可能性がある。株式市場で一気に放出すれば日産株の暴落を招きかねない。

ルノーの持ち株を最も高く買ってくれるのが日産なのだ。幸い日産には現金などの手元資金がおよそ2兆円あり、ルノーから自社株を買い戻す資金力は十分にある。日産株の売却検討が報じられると、ユーロネクスト・パリ(旧パリ証券取引所)ではルノー株が一時8.3%高となった。日産との「関係希薄化」をフランスの投資家は歓迎しているようだ。

文:M&A Online編集部

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