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M&Aの「合併契約書」サンプル書式と注意点

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2.合併契約書 作成時の注意点

2-1.合併契約書で法律上必ず書かなければならない事項

合併契約書には、株式譲渡契約書や事業譲渡契約書などとは異なり「会社法上必ず記載しなければならない事項」があります。これが書かれていなければ合併が無効になる可能性があるので、要注意です。

法律上必ず書かなければならないのは、以下の5つです。

①存続会社、消滅会社の商号及び住所
合併後に存続する会社(吸収会社)と消滅する会社(消滅会社)それぞれの商号と住所(本店所在地)を明示します。本書式では第2条にて明らかにしています。

②消滅会社の株主が所有する株式に代えて交付する対価に関する事項
消滅会社の株主は、会社が消滅する代わりに存続会社から株式などの対価を得ます。その対価に関する事項を契約書内で明らかにしなければなりません。本書式では第3条にて定めています。

③対価の割当てに関する事項(合併比率)
消滅会社へ割り当てられる対価が、現在の消滅会社の株式に対してどのくらいの割合になるのか、比率を定める必要があります。本書式では第3条にて定めています。

④合併後の存続会社の資本金及び準備金に関する事項
純資産の部がどのような会計処理になるのか、具体的にどの程度増加するのかを定めておく必要があります。合併後は存続会社(吸収会社)の資本金や準備金が増加しますが、債務超過の会社を合併する場合は資本金が減少します。本書式では第4条にて消滅会社の純資産の部をそのまま引き継ぐ場合を記載しています。

⑤合併の効力発生日
合併の効力が発生する日にちを特定する必要があります。本書式では第5条に定めています。

2-2.定めておいた方が良い事項

以下で、定めておいた方が良い事由について解説を加えていきます。

商号変更
合併にともなって、存続会社の商号を変更するケースも多数です。その場合、合併契約書にも商号変更について記載しておきましょう。 

株主総会について
合併を行う際には、当事者となる企業がそれぞれ株主総会決議を行って可決承認を得る必要があります。効力発生日前に双方が株主総会決議をとることを明示しておきましょう。日付を特定するケースもよくあります。 

会社財産の管理や引継ぎについて
合併をすると、消滅会社の財産や権利義務などがすべて存続会社へと引き継がれます。事業譲渡と異なり個別の財産や権利義務の指定は不要です。

通常は、消滅会社がある時点における貸借対照表などの財務関係の資料を存続会社に開示して承認を得た上で、その後効力発生日までに増減した結果が包括的に承継される内容とします。

上記の書式では念のため、存続会社による確認日以後効力発生日までに増減した内容については、消滅会社が計算書を作成して存続会社に説明するよう定めています。 

役員の構成について
合併後の役員構成がどのようになるのか。存続会社の取締役や監査役の選任は、株主総会の承認によって決定されることを記載します。

退任する役員について
消滅会社の取締役や監査役が退職する場合は、役員慰労退職金を支給することがあります。消滅会社の株主総会の承認によって決定されることを記載します。

従業員の取扱いについて
合併の場合、従業員は存続会社へそのまま引き継がれ、雇用条件は消滅会社におけるものが適用されます。従業員の取扱いは重要なので、念のため契約書においても確認的にすべての従業員が引き継がれると定めておきます。

解除について
天変地異や著しい財務状況の悪化などの事情が発生したら、合併は困難となります。そういった場合には解除が可能であることを定めておきましょう。

 ・・・・・

一般的にわかりにくいイメージもある企業合併ですが、上記のように契約書を作成すれば、無事に合併契約を完結できます。契約書の書式は個別のケースに応じてアレンジして利用してみてください。

※ 上記はあくまでサンプルです。事案により内容は変わります。

文:福谷陽子(法律ライター)/編集:M&A Online編集部

福谷 陽子 (ふくたに・ようこ)

法律ライター 元弁護士

京都大学法学部卒業
10年の実務経験を積んだ後ライターに転身し、現在は各種法律記事を中心に執筆業を行っている。弁護士時代は中小企業法務や一般個人の民事事件を中心に取り扱っており、その経験を活かし法律ライターとして活躍中。


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