黒字転換を目指していた第一屋製パン<2215>の2019年12月期の当期損益が2期連続の赤字に陥ることになった。経常損益も黒字予想から2期連続の赤字に転落、営業利益は当初予想通り3期連続の赤字となる。
ポケモンパンなどのキャラクター商品は堅調なものの、食パンやロールパンなどのパン類やドーナツなどの菓子類が振るわず減収になるのに加え、原材料費や物流費、人件費などの上昇が重なり、下方修正を余儀なくされた。
同社は2008年と2009年に不採算事業からの撤退を目的に子会社や事業を譲渡した経験があり、今後の経営再建の中で同様のM&Aが浮上してくる可能性もありそうだ。
M&Aで経営改善も
第一屋製パンは12月9日に2019年12月期の業績予想を下方修正した。売上高は当初予想より3億円少ない248億円となり、営業損益は5000万円の赤字から3億9000万円の赤字に拡大。経常損益は9000万円の黒字から3億1000万円の赤字に、当期損益は1000万円の黒字から3億7000万円の赤字に転落する。
消費者の節約志向や低価格志向、さらには価格競争の激化などの厳しい環境が続く中、生産効率の向上や原価管理の強化、物流費の改善などに取り組んだもののコストアップを吸収することができなかった。
〇第一屋製パンの業績推移 ※決算月は12月。2019年は予想。△は赤字
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年(予) | |
売上高(億円) | 250.74 | 266.93 | 266.02 | 251.45 | 248 |
営業損益(億円) | 1.58 | 4.64 | △0.41 | △5.71 | △3.9 |
経常損益(億円) | 2.59 | 5.53 | 0.84 | △4.38 | △3.1 |
当期損益(億円) | 1.5 | 4.1 | 0.57 | △5.31 | △3.7 |
第一屋製パンは業績の低迷に伴う不採算事業からの撤退という経営方針に従って、2008年に米国ハワイでパンや菓子の製造を手がけていた子会社のダイイチヤ・ラブスベーカリーインコーポレーテッド(ホノルル市)の全株式を売却した。
さらに2009年にも同経営方針に沿って仙台工場(宮城県大和町)にかかわる事業(土地や設備、その他必要な固定資産など)をパンや和洋菓子のメーカーである白石食品工業(盛岡市)に譲渡した。
第一屋製パンの2007年12月期の営業損益は9億7300万円の赤字、経常損益は4億9300万円の赤字だった。2019年12月期の営業損益、経常損益の赤字額は2007年当時より小さいが、営業赤字は3期連続となるため、2008年、2009年と同様に、子会社売却などを通じたM&Aが経営改善の有力な選択肢となることはあり得そうだ。
文:M&A Online編集部