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M&Aの最終契約書(事業譲渡の場合)サンプル書式と注意点

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※画像はイメージです

2.事業譲渡契約書作成の注意点

以下では、事業譲渡契約書を作成する際の注意点をご紹介していきます。

2-1.承継する資産や債務の範囲について

まずは承継対象となる資産や負債の特定が重要です。事業譲渡は株式譲渡とは異なり「個別の資産や負債の譲渡」によって行うので、きちんと譲渡対象を特定していないと後に大きなトラブルにつながります。資産、負債について詳細な目録(資産目録といいます)を作り、事業譲渡契約書に添付しましょう。 

またプログラムやウェブサイトなどの著作物を譲渡する際には「著作者人格権」に注意が必要です。

著作権のうち財産的な権利は他者へ移転できますが、人格的権利(氏名表示権など)は移転できないからです。もしも著作物を譲渡するのであれば、売り手企業が著作者人格権を行使しないなどの特約をつけておく必要があります。

2-2.取締役会、株主総会の決議について

事業譲渡を行うときには、譲渡会社においても譲受会社においても会社における承認が必要です。そこでまず、契約前に両社において取締役会の承認を得ておく必要があります。そして譲渡会社では、譲渡日までに株主総会決議における承認を得る必要があります。ひな形では、確認のためにこれらの議事録の写しをお互いに交付し合う内容としています。

2-3.従業員の引継方法について

事業譲渡の場合、株式譲渡とは異なり従業員が当然には引き継がれないので、従業員の引継や処遇について必ず定めなければなりません。

従業員の引き継ぐ方法としては、以下のようなパターンが考えられます。

・希望する従業員が譲受会社に移転。雇用条件は譲渡会社のものが適用される。
・希望する従業員が譲受会社に移転。雇用条件は譲受会社のものが適用される。
・従業員は移転させず、引きつづき譲渡会社が雇用する。

アレンジとして、一定期間、譲渡会社の従業員が譲受会社に出向してサポートする方法などもあります。

2-4.競業避止義務の期間について

事業譲渡契約では競合行為(同じ事業を行うこと)を制限する「競業避止義務」も極めて重要です。

事業譲渡後、譲渡会社が同種の事業を行うと譲受会社が不利益を受けてしまいます。そこで法律上、譲渡会社は同じ市町村内と隣接する市町村内において、譲渡したのと同じ事業を行うことが20年間禁止されます。

事業譲渡契約書に競業避止義務を規定する際には、法律の規定内容と異なる定めを置くことが可能です。たとえば競業避止義務の存続期間を30年などと長くしたり、反対に5年などと短くしたりすることができます。

また競業が認められない地域を「同じ都道府県内」「複数の市区町村、都道府県内」などと広げることもできますし、同じ事業のみならず類似事業も行ってはならないとすることもできます。

競業避止義務を強くすると譲受会社にとってメリットが大きくなり、弱めると譲渡会社にとってメリットが大きくなります。ケースに応じてどこまでの競業避止義務を定めるか、両当事者でよく話し合って決めましょう。

3.事業譲渡契約書と印紙税

事業譲渡契約は、印紙税の課税対象となる契約です。契約書には譲渡対価に応じた収入印紙を貼付しなければなりません。

【原則的な印紙税の金額】

契約金額 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円以上10万円以下 200円
10万円を超えて50万円以下 400円
50万円を超えて100万円以下 1000円
100万円を超えて500万円以下 2000円
500万円を超えて1000万円以下 1万円
1000万円を超えて5000万円以下 2万円
5000万円を超えて1億円以下 6万円
1億円を超えて5億円以下 10万円
5億円を超えて10億円以下 20万円
10億円を超えて50億円以下 40万円
50億円を超える 60万円
契約金額の記載がない 200円

・・・・・

事業譲渡契約を締結する際には、両当事者がしっかりと協議をした上でお互いが不利益を受けないように慎重に進めるべきです。契約書を作成する際には、今回ご説明した内容や上記に上げたひな形を参考にしながら、専門家のアドバイスを受けて進めていきましょう。

※ 上記はあくまでサンプルです。事案により内容は変わります。

文:福谷陽子(法律ライター)/編集:M&A Online編集部

福谷 陽子 (ふくたに・ようこ)

法律ライター 元弁護士

京都大学法学部卒業
10年の実務経験を積んだ後ライターに転身し、現在は各種法律記事を中心に執筆業を行っている。弁護士時代は中小企業法務や一般個人の民事事件を中心に取り扱っており、その経験を活かし法律ライターとして活躍中。


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