【M&A戦略】既存のビジネスモデルからの脱却を狙う

 まず、貸出競争激化を背景に合理化を図る両行の沿革を見ていこう。両行の沿革のうち主要なイベントをピックアップしてみた。

表3:三重銀行の主な沿革

年月内容
1895年11月 株式会社四日市銀行として資本金30万円にて創業
1919年3月 株式会社山田銀行を合併
1921年12月 株式会社河曲銀行を合併
1922年3月 株式会社員弁銀行を合併
1927年3月 株式会社津農商銀行を合併
1927年5月 合資会社小津銀行を合併
1928年6月 株式会社四日市貯蓄銀行を合併
1939年12月 商号を株式会社三重銀行と改称
1945年4月 株式会社伊賀農商銀行を合併
1986年11月 名古屋証券取引所市場第二部へ上場
1988年9月 名古屋証券取引所市場第一部へ指定替え
1996年12月 東京証券取引所市場第一部へ上場

表4:第三銀行の主な沿革

年月内容
1927年7月 三重無尽株式会社を熊野市木本町176番地の1に資本金250千円をもって設立
1940年3月 三重勧業無尽株式会社(本店所在地 四日市市)を合併
1944年3月 共融無尽株式会社(本店所在地 津市)を合併
1951年10月 相互銀行法にもとづく相互銀行業の免許を受け、株式会社第三相互銀行に商号変更
1961年10月 当行株式を大阪、名古屋各証券取引所市場第二部に上場
1973年3月 当行株式、大阪、名古屋各証券取引所市場第一部に指定替え(平成15年6月 大阪証券取引所への上場を廃止)
1989年2月 普通銀行に転換し商号を株式会社第三銀行に変更
2009年9月 第三者割当方式によるA種優先株式300億円発行

 M&AOnline編集部作成

 両行とも三重県を地盤に事業展開を行ってきた金融機関である。創業から昭和20年代にかけて近隣の同業と合併を行って以後、上場市場の指定替えはあったものの、大きな組織再編などは実施していないといえよう。

 ところが、である。最近になって、人口減少・マイナス金利政策のダブルパンチを受け、両行のみならず、地方銀行同士の再編・経営統合が目に付くようになった。

 2016年からの事例をまとめてみると、以下の通りである。その背景と狙いについて見ていきたい。

表5:最近の地方銀行の経営統合・提携

年月エリア内容
2016年2月 九州 ふくおかフィナンシャルグループ<8354>と十八銀行<8396>が経営統合で基本合意
2016年3月 関東 千葉銀行<8331>と武蔵野銀行<8336>が包括提携
2016年4月 関東 横浜銀行<8332>と東日本銀行<8536>の経営統合でコンコルディア・フィナンシャルグループが発足
2016年4月 九州 大正銀行がトモニホールディングス<8600>の傘下に入る
2016年10月 関東 常陽銀行<8333>と足利ホールディングス<7167>の経営統合でめぶきフィナンシャルグループ発足
2017年2月 中部 三重銀行<8374>と第三銀行<8529>が経営統合で基本合意
2017年3月 関西 みなと銀行<8543>と近畿大阪銀行、関西アーバン銀行<8545>が経営統合で合意
2017年4月 北陸 第四銀行<8324>と北越銀行<8325>が経営統合で基本合意

M&AOnline編集部作成

 これまでも地銀再編の事例はあったが、この1〜2年で流れが加速しているのが見てとれる。背景にあるのは人口減少・高齢化の進展などによる地方経済の失速と、2016年1月から導入された日銀によるマイナス金利政策だ。さらに金融庁も横並びで貸出競争を行う既存のビジネスモデルは限界に近づいているとし、新しいビジネスモデルを確立するよう変革を迫っている状況である。

 地方経済の失速により、企業の資金需要は低迷している。地方に本店を構える地方銀行の多くは貸出を思うように伸ばすことができず、利益を上げることが難しくなっている。マイナス金利政策により貸出金利には下げ圧力が生じているが、既にゼロに近い預金金利はこれ以上引き下げることができない。

 必然的に地方銀行の中核業務である預貸利益が圧迫される構造となっており、金融庁も2025年3月期に地方銀行の半数以上が本業で赤字になるとの試算を示している。地方銀行の経営環境は厳しさを増し、危機感は募る一方だ。

 また、以前から全国的に金融機関の数が多すぎるオーバーバンキングが指摘されており、両行のお膝元である三重県も例外ではない。これまで百五銀行・三重銀行・第三銀行が並び立つ環境であったが、今回の統合により集約が図られることとなり、収益の改善につなげられるかが焦点となりそうだ。

 両行の経営統合で、資産規模も中部3県の地方銀行のうち百五銀行に次ぐ4位に浮上する予定である。両行首脳は人員整理を検討しておらず、間接部門の共通化などにより生じた余剰人員を成長分野に振り向ける見込みだ。成長分野としては事業承継やM&A仲介、ビジネスマッチングの強化を掲げる。

 いずれにしても経営環境の厳しさが増す中で、今回の経営統合により効率化を進め、いかに早く既存のビジネスモデルからの脱却を推し進められるかが生き残りのカギとなりそうだ。