[遺言執行者に対する報酬(遺言執行費用)は、被相続人の債務とはいえないから、相続財産から控除すべき債務には該当しないとした事例]
支部名 大阪 裁決番号 平090098 裁決年月日 平100423 裁決結果 棄却
争点番号 400503990 争点 5相続税の課税価格の計算/3債務控除/9その他の債務
要旨A
請求人は、本件費用は被相続人が生前に遺言執行者と交わした委任契約等に基づくものであるから、被相続人の債務である旨主張するが、被相続人が生前、遺言執行者に遺言の執行を委任しこれに対して一定の報酬を支払う旨の合意があったとしても、当該受任者は、当該合意に基づいて遺言執行者の地位を取得するものではなく、遺言が効力を生じた後、遺言執行者に就任することを相続人に承諾することによってのみ遺言執行者の地位を取得することができるというべきところ、遺言は、遺言執行者を指定した部分を含め遺言者の死亡の時に初めてその効力を生ずるのであるから(民法第985条第1項)、生前における遺言執行者との合意は遺言執行者の指定を内容とする有償の委任契約としての効力を有しない。
また、遺言執行者の指定の効力が生じた時点では既に被相続人が死亡しており、かかる死者との委任契約が生ずる余地はなく、被相続人が生前において自ら本件費用を負担することはあり得ず、むしろ、遺言執行者に関しては委任に関する規定が準用され(民法第1012条第2項)、遺言執行者と相続人の間は委任に準じた法律関係により律せられるものであるから、本件費用を負担するのは相続人である請求人というべきである。
要旨B
請求人は、民法第1021条の「遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。」との規定を根拠として、本件費用が相続人の債務であるとする原処分庁の判断は誤りである旨主張する。
しかし、民法第1021条は、遺言執行費用の支払が相続債務に準ずるものとして相続人に責任が及ぶのかどうかについて明確にしたもので、遺言執行費用の支払が相続財産をもってする有限責任であり、仮に遺産債務と遺言執行費用の合計が相続財産を超過し、かつ、限定承認がされていなかったような場合に、相続人固有の財産をもってまで責任を負う必要がないことなどを定めたものであるが、このことは遺言執行費用が被相続人の債務でないことを前提としているものであり、この点に関する請求人の主張には理由がない。
要旨C
請求人は、家庭裁判所における遺言執行の報酬の付与に係る審判においては、単に報酬権と報酬額を定めるだけで相続人を債務者として給付を命ずることができないと実務上取り扱われているとし、このことから本件費用は相続人の債務でないと主張するが、この取扱いは当該審判が報酬請求権及び報酬額を形成するだけであることを示しているにすぎず、この点に関する請求人の主張には理由がない。
結論D
以上のとおり、本件費用は、被相続人の債務とはいえず、相続税の課税価格の計算上、当該債務を請求人が相続により取得した財産から控除できないとした原処分は適法である。
感情的には、ちょっと酷な裁決事例のようにも見えます。だって、被相続人が生前に弁護士さん等と遺言執行契約をしていたら、その約束通り支払うのが普通ですよね。「債務控除の対象にならないから遺言失効契約は無しにします」と言ったって、相手方も「いやいや故人とのお約束ですから」となるでしょう。そしてその支払いをすれば、当然、相続人の手元には残らないでしょう。
そうなると、債務控除の適用があるかどうかは別として、担税力の視点からは、相続税がかかるのは腑に落ちない気もしないではありません。では、遺言執行契約を破棄すればいいのでしょうか?
しかし、国税不服審判所は「税務上の是非」を判断する場所ですから「それは当方(国税不服審判所)には判断できることではない」というでしょうね。
いずれにせよ、それなりの遺言執行費用を支払うような場合には事前に遺言執行人との打ち合わせの他に、税務上の取り扱いも確認、検討しておいた方が良いかも知れませんね。
[著]節税ヒントがあるかもブログ メタボ税理士さん
[編集・改変]M&A Online編集部
本記事は、「節税ヒントがあるかもブログ」に掲載された記事を再編集しております。
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