昨年、中小企業庁は、中小企業のM&A活用促進を目的とした「事業引継ぎガイドライン」を策定、「事業引継ぎハンドブック」にまとめた。また、これまで一部の地域で展開していた「事業引き継ぎ支援センター」を全都道府県に展開、M&Aを活用した中小企業の事業承継を後押しする体制を敷いた。

国が事業承継に力を入れる理由はどこにあるのだろうか。また、どこまでサポートしてくれるのだろうか。東京都事業引継ぎ支援センターのプロジェクトマネージャー木内雅雄氏に伺った。

――最初に、事業引継ぎ支援センター設立の背景を教えてください。

 設立の背景には、年々深刻になる経営者の高齢化があります。今では、中小企業・小規模事業者の経営者の過半が60歳を超えていますが、その中で後継者が決まっている企業は約半数に過ぎないといわれています。

 ひと昔前は息子や娘が親の会社を継ぐのが当然でしたが、もはやそんな時代ではありません。といって従業員が継ぐのも必ずしも容易ではありません。そのような資質を有した従業員が社内にいる、ないしは外部から招聘(しょうへい)できるかということに加え、現経営者からオーナーの地位を継承するためには、相応の資金力が必要ですし、中小企業が借入する時には通常、経営者の個人保証が求められ、会社に借入があれば、新社長は個人保証をしなければなりません。仮に本人にやる気があっても、家族は反対することもあるでしょう。

 また、今後10年以内に団塊の世代の経営者が引退する年齢に差し掛かる点も問題の一つです。それまでに後継者が決まらなければ廃業しか道はありません。そうなればその会社に勤める方々の雇用が失われることはもちろん、長年培ってきたノウハウや技術も途絶えてしまいます。これは明らかに社会的な損失です。

 一方で、中小企業・小規模事業者を対象とする小規模ディールを支援する民間の市場はまだまだ不充分です。そこで、国が事業引継ぎ支援センターを設立し、中小企業・小規模事業者のM&Aを支援することになったわけです。

 事業引継ぎ支援センターは2011年に経済産業省の委託事業として誕生しました。当初は、東京と大阪に設置され、その後、支援センターは、徐々に増加。そして、ガイドラインが発表された昨年、支援センターは47都道府県すべてに設置されました。(次回に続く

取材・文:M&A Online編集部