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事業承継の相談事例(2)計画的な事業承継対策

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※画像はイメージです

丸の内アドバイザーズの岩松です。

 先日お目にかかった会社の方と、会社の株式をどのように子供たちに分けるかを相談していたときのことです。その社長様には子供さんが3人いるのですが、分割についてお考えを訪ねたところ、「公平に3分の1ずつ分けてあげたい」とのお考えでした。

 これは、ある意味ごく自然な発想であり、このようにお考えになる方は珍しくありません。また、会社の株式に限らず、不動産でもこのようなお考えをもたれるケースもよく見受けられます。

 ただ、私はあまりこの考えには賛成はいたしません。公平に1/3ずつというのは、単なる財産の金額としては公平ですが、会社は事業体ですから、運営という面も考えなければいけません。三人が同率で一つの会社を所有すれば、いざというとき意思決定がまとまらなくなったり、円滑な運営に支障を来す恐れが生じます。さらに、子供の代から孫の代へと相続が進めば、より株式が分散して保有されるようになり、結果として返って後の世代に禍根を残すことにつながります。これは、会社に限らず、不動産でも同様なことが言えます。

 上記の例のように、株式を1/3ずつ分けるのでなければ、一人一人にそれぞれ違った資産を承継させて財産を分配することになります。これは、それぞれの公平感を保つのは大変ですが、そのかわり、後のことを考えると会社や不動産を共有することによる苦労は回避することができます。そのためにはやはりキャッシュによって調整することが不可避です。

 一般に生前の相続対策として、相続税をできるだけ安くしようとすると、不動産を取得して相続財産の評価額を下げる方法が多く見受けられます。もちろんそれは効果が見込まれますが、一方で、ある程度キャッシュがないと、納税資金と、上記のような分割の際の調整に必要な資金とに困るリスクも生じます。また、相続財産全体としては納税額に見合ったキャッシュがあっても、各相続人ごとに見てみると、たとえば株式を引き継いだ事業の後継者が、あまりキャッシュを引き継げずに納税資金に困る、という事態も起こり得ます。

 このように、事業承継には、どのように財産を分割して相続させるか、そしてそれにはどれくらいのキャッシュが必要かをシミュレーションして、対策を考える必要があります。資金の問題に限りませんが、事業承継の対策には、計画的に時間をかけて対応策を実施することが大変効果的です。差し迫った事情があれば、M&Aや贈与、大きな資産の取得、売却といったいわば切った張ったの外科手術もやむを得ないケースもありますが、たいていそれには税金などのリスクも伴います。それに対して、計画的な生前贈与などは、たとえば漢方薬のように、短期的には効果が小さくても、長い期間行うことによってより安全に、あるいは低コストで大きな効果を得られることができます。人の体と同様に、事業承継や相続対策においても、基本は計画的に漢方薬的な対策に軸足を置き、必要なときにだけ外科的な手法を交えるということが理想的だと考えます。

 今は、長期にわたって株価が冴えず、経営的には困難な時期ではありますが、逆に、会社の株式評価が下がるなど、事業承継対策の面では、いろいろな対策が打ちやすい時期だと言えます。賢明な経営者の方々は、こうしたチャンスを逃さずに将来を見据えて計画的に対策を打っていらっしゃるようです。

文:「士業(サムライ)日記 専門家集団・丸の内アドバイザーズのブログ」より転載

岩松 琢也 (いわまつ・たくや)

丸の内アドバイザーズグループ 公認会計士・税理士
岩松 琢也(いわまつたくや) 

略歴:
1970年 千葉県生まれ
1993年 一橋大学商学部卒業
1992年 公認会計士2次試験に合格後、監査法人トーマツに入所し、公開支援業務、法定監査などの経験を積む。
1994年より、石津・野口会計事務所および千葉第一監査法人にて、法人・個人の税務に携わるとともに、上場会社、学校法人、公益法人などの監査業務に関与。特に地域に密着した中小規模の会社に関する業務の経験を積む。
2001年 M&A仲介会社である株式会社ストライクの設立に参画し、主として中小・中堅企業のM&A仲介業務にあたるとともに、公認会計士として企業価値算定、デューデリジェンス業務なども担当し、豊富な実務経験と実績を積む。

(リンク先:http://www.m-adv.co.jp/ ) 


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