【法律とM&A】相続による遺産整理手続

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 平成27年の相続税制改正により相続にスポットが当たったためか遺産整理という言葉をよく耳にするようになりましたので相続の遺産整理手続についてお話させていただきます。

 遺産整理とは、亡くなられた方(被相続人)の財産(相続財産)を相続人に引き継ぐことです。その引継手続全般を遺産整理手続といいます。

 これらの手続きを相続人に代わり業務として行うことを遺産整理業務といいます。主なところでは、信託銀行などが遺言信託により遺産整理業務をされています。

 なお、遺産整理業務は、司法書士が財産管理業務(税務申告は税理士専門分野のため除く)として、代理して行うことができる旨法律上明文化されています。(司法書士法施行規則第31条)

 遺産整理手続の主なものは、相続財産調査、相続人調査、遺産分割協議書作成、不動産名義変更登記手続、預貯金解約手続、株式等有価証券承継売却換価手続、所得税準確定申告、相続税申告手続です。

 相続財産調査は主に財産価格の確認です。

 不動産であれば固定資産評価証明書・名寄帳を取得し、預貯金・株式等有価証券であれば銀行又は証券会社より死亡日現在の残高証明書(既経過利息込)を取得します。借地権も相続財産になります。なおローンの支払いや保証債務があれば、これらも相続財産となります。

 相続人調査は主に戸籍の収集です。

 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の現在の戸籍謄本、その他住民票、戸籍の附票の取得が必要になります。本籍を転籍されていたり、相続人が婚姻等により別の地に本籍を構えていれば、それらすべての戸籍を各行政機関より取得する必要があります。

 なお相続人に行方不明者がいれば不在者財産管理人選任申立を、未成年者がいれば原則特別代理人選任申立をそれぞれ家庭裁判所へ行います。

 相続財産が確定したら相続人調査により判明した相続人全員で遺産分割協議をします。協議内容を相続人全員が同意すれば、遺産分割協議書を作成し読み合わせの上相続人全員に署名押印いただきます。

 遺産分割協議は、相続人全員が納得される内容で協議されることが一番大事です。それをふまえた上で相続税の支払いについて検討することです。

 相続税額を減らすためだけの遺産分割協議は後々のトラブルになりかねませんのでお勧めできません。また不動産の兄弟間共有による分割協議についてもトラブルの元になりかねません。なお遺言があれば相続財産の承継は原則それに従います。

 遺産分割協議により相続財産の承継先が確定すれば、不動産の相続による名義変更登記手続(所有権移転)、預貯金であれば原則解約手続、株式等有価証券であれば承継人の新規証券口座を開設したうえ移管する名義変更手続、もしくは売却口座作成のうえ移管し売却する換価手続きを行います

 相続税の申告が必要であれば税務署に申告します。被相続人死亡日から10か月以内で、なお死亡日から4か月以内には所得税準確定申告が必要になります

 主な遺産整理手続は上記の通りとなり、これら遺産整理手続は司法書士が業務として行うことができます(税務申告除く)。

 これらの他、遺産分割がまとまらない場合等法律行為、調停や裁判の代理人を立てる場合には弁護士が、相続税申告及び所得税準確定申告をする場合には税理士が、不動産が借地権等権利関係が複雑な場合のその不動産価格を算定する場合には不動産鑑定士が、相続財産である土地を共有せずに分割する等、境界確定・測量・分筆する場合には土地家屋調査士が、車の名義書換や各種行政手続を行う場合には行政書士が、不動産を売却し換価する場合には宅地建物取引士が、それぞれ専門家として遺産整理手続をサポートします。

 このように相続による遺産整理手続には、ケース毎に様々な専門家が必要になります。

文:司法書士法人・行政書士法人 星野合同事務所 メルマガVol.98より転載

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