「イノベーションのレースに敗れたゼロックス」
ハーバードビジネススクールのデイビッド・ビー・ヨフィー教授は、「ゼロックスは、新世代技術へ移行できない独占技術ビジネスの代表選手」とコメントした。同教授によれば、ある企業が高く飛躍しても、次なる躍進については隙がある。ゼロックスも、コダックやブラックベリー同様、革新のレースの敗北者であり、いわゆる“コンピテンシートラップ(高業績者の行動特性が陥りやすい罠)”そのものである。一つのことに熟達した組織は、新しい事業を学べなくなってしまう。
具体的に記事は次のように解説している。ゼロックスは好調時には新技術の研究所の新設に加え、1973年にマウスを使ってウインドウを操作する世界初のGUI(グラフィカルユーザインタフェース)環境を開発して現在のパソコンの原型となる「Alto(アルト)」を制作したが、高額すぎて商品化には失敗。1980年代になると、コピー技術の特許が消滅し、キヤノンやリコーなどとの低価格競争に直面した。そこで金融サービスに手を出したが失敗し、1990年代にはそのすべてを売却。同時期から、ゼロックスは、Eメールと文書を電子送配信する世界中の企業との戦いにもさらされた。ペーパーレス化の推進はゼロックスの特権をむしばんだ。近年、ゼロックスは、事業サービスに触手を伸ばしている。具体的には、会社の文書の流れの改善、健康事業、人事などであり、高速道路のETCの受注などに成功。しかし、コピー事業を埋め合わせるには至っていない。
「ゼロックスにとってはベストの選択肢」
ブランダイス国際ビジネススクールのベン・ゴメス・カッセール教授は、今回の合併が「最善の道」だと評価した。同教授によれば、富士フイルムとの合弁は1960年代に始まったが、ゼロックスにとっては「光明」だった。当初はより強力なパートナーだったゼロックスは、技術とノウハウを共有し、日本のパートナー(富士フイルム)から恩恵を受けてきたという。記事は、「富士フイルムなしには、ゼロックスは何年も前に破綻していたかもしれない。」と結論づけている。