6月23日、イギリスは欧州連合(EU)からの離脱を問う国民投票を実施する。EUからの離脱が選択され た場合、2018年6月までに「リスボン条約(欧州連合条約および欧州共同体設立条約を修正するリスボン条約)」の適用は停止されることになる。EUに加 盟していたことに伴う、経済的なメリットを失うことになり、イギリスのみならず世界経済に大きな影響を与える可能性が指摘されている。
今回、東京商工リサーチは保有する国内企業データベースと、業務提携するDun & Bradstreet(ダンアンドブラッドストリート、本社・米国)の世界最大級の海外企業データベースを活用し、日系企業のイギリスへの進出状況を調査した。
この結果、イギリスには343社の日系企業が進出し759カ所の拠点を展開していることがわかった。進出拠点の業種は、事業関連サービス業や卸売業、金融機関、保険業など多岐にわたっており、イギリスのEU離脱の動向は、日系企業にも影響を及ぼす可能性がある。
※本調査は、Dun & Bradstreetが提供する「WorldBase」と東京商工リサーチが保有する企業データベースを活用した。「WorldBase」よりイギリスの 事業拠点(以下、拠点)を抽出し、拠点を管轄する企業の支配権(議決権・所有権)を50%超有している企業を特定。特定された企業がグループにおける頂点 企業ではない場合、同様の方法でグループ最上位企業を特定。特定されたグループ最上位企業が日本に所在する場合、日系企業とした。このため、支配権が 50%以下の場合は集計対象外とした。
※業種分類は、米国連邦政府が開発し世界的に広く普及しているSICコード(Standard Industrial Classification Code)の1987年版を採用した。
現地拠点759カ所の産業別は、製造業が最も多く264拠点(構成比34.8%)だった。次に多かったのは、サービス業の165拠点(同21.7%)と続く。
また、金融・保険業は107拠点(同14.1%)だった。国際金融でイギリスのシティは、アメリカのウォールストリートに次ぐプレゼンス(存在感)を 持っている。世界各国の金融機関が、EU内の1国で事業の認可を得ると域内の他国でも事業活動が可能になる「パスポート制度(パスポーティング)」などが 存在するためだ。イギリスがEUから離脱した場合、この制度が利用できなくなり、新たに認可の取得を迫られる可能性がある。このため、進出している日系企 業の業績に影響を与え、場合によっては進出戦略の見直しを迫られる恐れもある。