西洋料理店の精養軒が上場廃止、上野店の宴会利用率はわずか4%に

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上野精養軒(東京・上野)

1872年に西洋料理店として創業した精養軒<9734>が、2023年5月19日に上場廃止となります。122,500株を1株にする株式併合を行い、一般財団法人福島育英会(東京都中央区)や三井不動産<8801>などの一部株主が、併合前の1株を1,200円で強制買取するというものです。

精養軒は2021年1月期の売上高が前期比77.6%減の7億6,000万円まで縮小しました。新型コロナウイルス感染拡大の影響を強く受けた飲食企業の一つでした。

上場廃止後はコスト削減や上野本店の大規模なリニューアルを実施して経営環境の抜本的な改革を行い、中長期的な企業価値向上を図ります。

この記事では以下の情報が得られます。

・精養軒の業績推移
・店舗別売上高

16億円以上あった上野店の売上が1/5に

精養軒は1872年に築地で開業した西洋館ホテルが源流。築地には外国人の居留地があり、接待するための西洋料理店が必要でした。当時、日本には本格西洋料理店がなかったため、岩倉具視や三条実美が援助して西洋館ホテルをオープンしました。

1876年に上野恩賜公園の整備に伴い、支店を出してほしいと岩倉具視が要請。上野精養軒を開業しました。

1923年の関東大震災でに築地本店が消失。上野精養軒が旗艦店となります。

2004年にジャスダックに上場しました。独立した店舗だけでなく、東京大学医学部付属病院や東京工業大学、東京都美術館などにも出店しています。

コロナ前の売上高は30億円台でしたが、コロナ禍で10億円を下回りました。2023年1月期は10億円台を回復したものの、本業で稼ぐ営業利益は出ていません。

※決算短信より筆者作成

居酒屋店を中心とする外食企業の多くは、営業利益が出なかったとしても、助成金や協力金などの営業外収益を得て経常黒字化を果たしていました。しかし、精養軒は営業利益の赤字幅が大きく、助成金で損失を埋めることができませんでした。

■精養軒損益計算書の一部(2021年3月期・2022年3月期)

※決算短信より筆者作成

2021年1月期は9億2,900万円、2022年1月期は4億7,600万円、2023年1月期は3億900万円の純損失をそれぞれ計上しています。

精養軒は売上高の回復が急務。しかし、稼ぎ頭の上野店が戻りません。2020年1月期は16億円の売り上げがありましたが、コロナ禍以降は3億円程度に留まっています。

店舗別売上高(単位:百万円) 2020年1月期 2021年1月期 2022年1月期
上野 1,602 310 335
科学博物館 206 45 118
東京都美術館 413 57 129
浅草 80 15 13
東京文化会館 409 43 84
松屋 109 43 60
東京大学付属病院 94 31 15
大岡山 86 20 10

有価証券報告書より

上野店が苦戦している一番の要因が宴会の消失です。2019年1月期の上野店の宴会利用率(収容能力に対する実績)は31%でした。2022年1月期は4%ほどしかありません。

仮に宴会の1人単価が8,000円だったとすると、2019年1月期の宴会売上は9億円ありましたが、2022年1月期は1億2,000万円程度になる計算です。

これまでのビジネスモデルが完全に崩壊してしまいました。

麦とホップ @ビールを飲む理由

しがないサラリーマンが30代で飲食店オーナーを目指しながら、日々精進するためのブログ「ビールを飲む理由」を書いています。サービス、飲食、フード、不動産にまつわる情報を書き込んでいます。飲食店、宿泊施設、民泊、結婚式場の経営者やオーナー、それを目指す人、サービス業に従事している人、就職を考えている人に有益な情報を届けるためのブログです。やがて、そうした人たちの交流の場になれば最高です。

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