客数は前期比7.9%増、客単価は3.5%減
スタッフが充実したことで顧客満足度が上がり、実際の売上に結びついたのかというと、そう簡単にはいっていません。
下のグラフは、客数(青)、客単価(赤)、売上(灰)の前期比の推移を表したものです。青に注目してください。客数は増えています。
一方、客単価(赤)は2015年を境に減少しています。2018年は100%を下回りました。実は、良品計画は2018年に大幅な値下げを断行しているのです。

2018年春夏シーズンでは、標準店で取り扱う5600品目のうち、2400品目の価格見直しを行いました。例えば、脚付マットレスは3万5000円から2万9900と15%もの大幅値下げをしています。
値下げ効果を見てみましょう。下期で価格を見直したアイテム数は377でした。売上数量の合計は前期比132.9%となりましたが、売上高は前期比104.4%とほぼ横ばいです。高額で利益率の高い家具は、売上が前期比割れを起こしています。これだと、店舗スタッフを増強した意味があまりありません。
カテゴリ | 価格見直しアイテム数 | 売上数量(前期比) | 売上高(前期比) |
---|---|---|---|
ファブリックス | 187 | 149.4% | 118.2% |
ファニチャー | 118 | 122.3% | 99.8% |
ハウスウェア | 72 | 137.0% | 116.9% |
合計 | 377 | 132.9% | 104.4% |
※決算説明資料をもとに筆者作成
無印良品の牙城だった生活雑貨に侵攻したのが、ニトリホールディング<9843>です。生活雑貨が売上の6割を占めるニトリは、無印良品を徹底的にベンチマーク。似たテイストの商品を低価格で提供しました。
安い方が良いという消費者意識を上手く利用したニトリ

ここで、良品計画の成り立ちを見てみましょう。
良品計画は1989年に西友の100%子会社として設立されました。セゾングループの堤清二氏が、商品にブランド名が付くだけで高額になることに疑問を抱き、無名であることを消費者にぶつけたといわれています。有名なキャッチコピー「わけあって安い」は、こうした背景から生まれています。この戦略が無印良品の”ブランド”となったのです。
バブルが崩壊してDCブランドブームが去ると、消費動向は節約志向へとシフト。シンプルで飽きのこない無印良品のデザインは、時代にマッチしました。しかし、簡素であるという良品計画の商品は、裏を返せば簡単にマネできるということです。
無印良品の”ブランドがないこと”に価値を感じていた、一般消費者の意識に変化が現れます。”安物”として認知されているブランドを持つことに、何の躊躇もしなくなったのです。似たような商品なら安い方が良いという、わかりやすい価値観が定着しました。
ニトリはそこに目をつけて成功し、良品計画は消費者意識の変化の渦に巻き込まれたというわけです。