日本で浸透するために、まず立ちはだかる「転貸禁止」の壁

アメリカや中国、また最近ではインドでも浸透してきたゴーストキッチン、クラウドキッチンという「食」ビジネスのコンセプト。日本で浸透するための課題としては、まず転貸禁止をはじめとした賃貸不動産業界側の規制への対応がある。

荒木氏の場合は、「夜の飲食店を朝や昼に使ってもらえる人はいないか」というのが、このビジネスのそもそものきっかけだった。調べてみると、賃貸不動産業の契約に盛り込まれている転貸禁止条項、いわゆる又貸しが大きなネックであることを知る。賃貸物件の借主は、他の人に勝手に転貸してはいけないという決まりだ。

そこで、そのような問題が起こらない契約の仕組みをつくり、キッチン物件の仲介ビジネスを展開してきた。

実は、無断転貸は禁止が妥当か否かという条項の法的な根拠は、70年近く前の判例(最判昭和28年9月25日)である。荒木氏は、「そもそも70年以上も前の判例に頼ったままである賃貸借契約の仕組みでよいのか」という疑問を提示する。

食品衛生法、衛生管理は柔軟に対応しているか?

また、「食」を扱う以上は食品衛生法も大きなハードルかもしれない。たとえば、シェアキッチンの使用で誰かが食中毒になった場合、その責任は誰が負うのかという課題がある。また、シェアキッチンにおいて什器備品が壊れていることに気づかず、利用者がキッチン仕事を遂行できなかったとき、その責任を誰が負うかといった問題もあるだろう。

小野氏はこのような点に考慮する意味で、自身が飲食店営業許可・菓子製造許可を取得したキッチンで事業展開している。また、「いわゆる趣味としての食事づくりでの利用は断り、あくまでも事業としての利用に特化している」という。それも、食品衛生への対応の1つのあり方だろう。小野氏はHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point=危害要因分析重要管理点)に沿った衛生管理を進めているが、そうした対応も「食」を扱うリスクへの対処が背景にある。

栄養士でもあるたかはし氏は、食品衛生法の課題に関して、「食についてのパブリックな場(いわゆる外食など)とプライベートな場(いわゆる家庭での食事など)の境界部分が広がり、そのニーズが多様になった。それに食品衛生法などの法律面、保健所の対応面などが追いついていない。その境界部分の多様性のなかで、主婦に代わって健康と食のマネジメントできる立場の人がいない」ことを指摘した。