起業をめざすスタートアップへの対応は?

木村氏の勉強会では、シェアキッチンの利用者から「つくったお菓子などを、どう販売したらよいか」という声が多く寄せられるそうだ。事業として始めても、実際のハードルは高い。木村氏は小野氏と同様、自分自身が菓子製造、飲食店営業許可を取得したシェアキッチンを展開するが、そうした菓子の製造・販売などの情報を収集し、相談に乗ったり情報提供したりする機会も多い。そのような情報を、いわゆる“まとめサイト”的にウェブで紹介している。

小野氏は自分が運営するシェアキッチンについて新規会員を広く求め、また、地元市からの委託事業やNPO等との恊働も進めている。そういった形で事業の裾野が広がっていく。それは、いわゆる空き家物件への対処という不動産業界の社会課題の解決の1つにもなるだろう。

大手の参入も激化するなかで

「2015年に始めたときは、世界にないシステムだと思った」(木村氏)、「いま同業者は国内に4社ほど。それぞれに仕組みが違うが、市場規模は6,000億円ほどと見込まれる」(荒木氏)など、日本に知られ始めたばかりのゴーストキッチン、クラウドキッチン。ネットの活用も進化発展し、専門のフードデリバリー業者なども今後は増えるだろう。また、旧来の不動産業界、店舗仲介業者も新たな取り組みとしてこの分野を狙っている。

さらに、異業種大手の新規事業としての参入もある。ただし、コストパフォーマンスが大きな課題であり、その点はオープンイノベーションというスタイルで新事業のプレーヤーを取り込んで進出しているケースも見られる。

一方、まったくの個人事業での参入も増えてはいるようだ。だが、キッチンには一定の資本が必要であるため、個人がいきなり参入するのはむずかしいのが現実だ。さらに、前述のように「可視化できにくい食品衛生に、新しいビジネスがどう対応するか」という課題は、この先も続くだろう。

消費税増税後の軽減税率の適用など細かな点を挙げれば、飲食店としての進出かテイクアウトしての進出か、また、それらの複合型か。さらに、従来は想像もつかなかったことにビジネスチャンスを見出すか。今後、食関連の起業をめざすスタートアップが、この、ある種マージナルなビジネスにどう関わっていくか、注目したい。

取材・文:M&A Online編集部