アメリカや中国、さらにインドでは市場に浸透

ゴーストキッチンやクラウドキッチンは、アメリカや中国、さらにインドではかなり一般的になってきた業態であり、相互に共通する面もある。だが、日本ではまだ登場したばかりともいえる。

日本では、「キッチンの有効活用」に注目すると、飲食や物販を事業として行うケースに限らず、そのキッチンで料理教室を開くために時間で借りるレンタルキッチンや、用意されたキッチンを複数の事業者・個人で共有するシェアキッチンといった呼ばれ方をするケースもある。また、飲食の店舗を持たない食品加工業者・仕出し屋などが食品加工の場として利用するというケースもある。

キッチンを事業として借りたりシェアしたりする側からすると、飲食業・食品加工販売業の一形態ということができ、貸したりシェア提供する側からすると、不動産業・大家業の一形態という見方もできる。

また、「クラウドキッチンは提供・仲介事業者としては拡張性がある」という見方もできる。なお、シェアキッチンは、シェアする側にとって「キッチンを所有しない形態」はレンタルキッチンと同様だが、ビジネスとして利用する場合、実態としては会員制を採用しているケースが多いようだ。

新しい「キッチン業態」の「どこ」に着目したか?

ゴーストキッチン、クラウドキッチンのコンセプトに対しては、「どの部分に着目してビジネスを展開するか」によって、実際の事業への取り組み方が変わってくるようだ。

菓子製造・飲食店営業許可つきのシェアキッチンを名古屋でオー
プンした木村優子氏

すたーとあっぷきっちんの木村優子氏は、ハウスメーカーに勤務の後、2015年10月、菓子製造・飲食店営業許可つきのシェアキッチンを名古屋でオープンし、利用者やシェアキッチン運営希望者向けの勉強会なども開催している。最近では、日本各地の自治体の委託を受け、使われていない食品加工場の再生・再利用や公共施設などでのキッチンビジネスの展開も進めている

首都圏を中心に従来の飲食店の定休日や空き時間を
活用したクラウドキッチンを展開する荒木賢二郎氏

よじげんの荒木賢二郎氏は、大学卒業後ウェブデザイン会社を創業し、12年後にその会社を事業譲渡した後、飲食店2店舗の開廃業を経て、2018年7月によじげんを設立。首都圏を中心に従来の飲食店の定休日や空き時間を活用したクラウドキッチンを展開し、その賃貸物件の仲介業務を行っている。

2013年に会員制シェアキッチンをオープンし
現在、2店舗を運営するた小野円氏

DelQuiの小野円氏は学習塾を経営した後、地元地域(東京・国立市)の食材をつかったジャムやピクルスの製造施設をオープンしたのを皮切りに、2013年には同地域に会員制シェアキッチンをオープンした。現在は2拠点を展開するほか、地元のNPOに所属する大学生などとの恊働プログラムも進めている。

2017年から「食」のデザインワークショップ・
コンサルティング事業などを展開する、たかはしかよこ氏

また、たかはしかよこ氏はIT企業勤務を経て、栄養士として「働く人の日常の食事」をテーマに2017年からデザインワークショップ・コンサルティング事業などを展開している。また、各地でシェアキッチンの提案なども行っている。

共通するのは、従来の飲食業や不動産業とも異なる業種・業界からアプローチしていること。既存事業の立場から、その延長上に新しいビジネスチャンスを見出すことは意外にむずかしい。特に産業・事業として古くからある飲食業や不動産業では、なおさらのことだ。

そこに4氏は新風を吹き込んだ。各氏とも消費者として、また提供側として、どのような「食」が最適なのかを考えた末の新事業であり、しかも「食」に関してさまざまな角度からアプローチしている点が興味深い。