誤解が生じるおそれアリ!よく聞く「株式保有割合」とは?

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2.発行済株式ベースと議決権ベース

「株式保有割合」という場合、以下の2種類の意味があります。

発行済株式ベース

会社が発行しているすべての株式における、保有株式の割合です。議決権のある株式だけではなく、自己株式や議決権のない株式も含めて計算されます。

たとえば発行済株式数が1万株の会社において、議決権のある普通株式を3,000株持っていたとします。この場合、「発行済株式ベース」で計算すると、株式保有割合は10分の3(1万分の3,000)となります。

議決権ベース

議決権のある株式に限定した株式保有割合です。たとえば発行済株式総数が1万、そのうち議決権のない株式が1,000株、議決権のある株式が9,000の会社があるとしましょう。この場合、議決権のある株式を3,000株持っていたら、その人の株式保有割合は3分の1(9,000分の3,000)となります。発行済株式ベースでは10分の3ですが、議決権ベースではそれより大きくなります。

株式保有割合について
M&A Online編集部作成

実際に株主の影響力を検討する場合、発行済株式ベースではなく議決権ベースの数字が重要です。

3.保有割合別、株主に認められる権利

さて、会社法では、株式保有割合に応じて株主に株主総会決議で意思決定する権利が認められます。保有割合が高くなるほど大きな権利を得られるのです。

3分の1以上で特別決議の成立を阻止できる
株式保有割合が3分の1以上になると特別決議の成立を阻止できます。特別決議の成立には3分の2以上の賛成が必要だからです。

過半数で普通決議を成立
株式保有割合が過半数になると、単独で普通決議を成立させられます。

3分の2以上で特別決議を成立
株式保有割合が3分の2以上になると、単独で特別決議を成立させられます。

3分の2以上で特殊決議の成立可能性も
株式保有割合が3分の2以上になると、特殊決議を成立させられる可能性が高まります。(特殊決議を成立させるには、それだけではなく株主の過半数の賛成も必要です)

上記の株主決議に関連する「株式保有割合」は、すべて「議決権ベース」の比率です。自己株式、議決権のない株式は含みません。議決権のない株式を多数持っていても、実際には意思決定に参画できないので意味がありません。

分母も議決権ベースとなります。株式保有割合を計算するときには、「議決権のある発行済株式総数」を分母「議決権のある保有株式」を分子として数字を出しましょう。

議決権の割合が重要になってくるのは、株主総会の場面だけではありません。連結子会社の判定など会計の場面でもよく問われます。

「持株比率」「持株割合」「出資比率」「出資割合」「保有比率」「保有割合」・・・など似たような用語が出てくるとき、さらっと流さずに何を意味しているのか考えてみましょう。今後「株式保有割合」を目にしたら、自己株式や議決権制限株式を省いた「議決権ベース」を基本に計算してみてください。

文:福谷 陽子(法律ライター)

福谷 陽子 (ふくたに・ようこ)

法律ライター 元弁護士

京都大学法学部卒業
10年の実務経験を積んだ後ライターに転身し、現在は各種法律記事を中心に執筆業を行っている。弁護士時代は中小企業法務や一般個人の民事事件を中心に取り扱っており、その経験を活かし法律ライターとして活躍中。


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