M&A相談所 その時、どうする?

株式譲渡の際、社員株主がいる場合に注意すべきことは?

弊社では、一部の役員や従業員に少数の自社株を持たせています。会社の業績が改善すると、社員が受け取れる配当金は増えます。「経営者と社員たちの一体感を高めたい」「社員たちに会社の成長を自分の喜びと思ってほしい」そんな私の思いから、社員株主を増やすことに取り組んできました。最近になって、私はM&Aで会社を譲渡することを考え始めました。社員株主たちの存在がM&Aに影響を及ぼさないか心配です。注意すべきことがあれば教えてください。(岐阜県・製造業経営)

社員株主に納得してもらえる譲渡先と株価、そして情報開示のタイミングが大事

社員株主についてのご相談をしばしばいただきます。社員で株主という特性ゆえに、会社の譲渡をご検討される際に不安に感じられるようです。仮に少数の株式しか持っていなくても、株主には株主総会を招集する権利、取締役・監査役の解任を求める権利、会計帳簿を閲覧する権利などがあります。

M&Aに反対されると問題です。買い手企業からも、少数株主である社員株主の存在は忌避されます。譲渡を検討するオーナー経営者には、できる限り社員株主に会社の譲渡に同意してもらい、自分と一緒に買い手企業へ株式を売却してもらうようにすることが求められるでしょう。

そこでポイントとなるのが次の2つです。1つは、社員株主の方々に納得いただけるように、信頼することができ、妥当な株価で買い取ってもらえる買い手企業を選ぶこと。もう1つは、譲渡することを適切なタイミングで社員株主に伝えることです。

その1「信頼できる企業に適正な株価で譲渡する」

まず大切なのは、社員株主の方々に反対されないような買い手企業を選ぶことです。納得が得られる信頼性の高い会社であることは当然として、保有する株式を適正な株価で買い取ってもらえることが肝心です。オーナー経営者自身が納得するだけでなく、社員株主にも納得してもらえるような会社であるか、適切な金額で株式を買い取ってくれるのかを念頭に買い手企業を探索していただく必要があります。

その2「譲渡を伝えるタイミングを見極める」

社員株主の方々に「M&Aで会社を譲渡すること」を伝えるタミングも重要です。M&Aは成約までに数ヵ月以上かかります。伝えるタイミングが早すぎると社員たちに無用な不安を与えるだけでなく、別の社員や外部の取引先に意図せぬ形で伝わってしまう情報漏洩のリスクが高まります。

多くのケースでは、買い手企業との基本合意書の締結直前、あるいは締結してから最終契約をする前のタイミングで、オーナー経営者が社員株主の方々に伝えています。自社や買い手企業との関係性や状況を鑑みながら、社員株主の方々に伝えるタイミングを検討するのがよいと思います。

実際にとある企業では、最終契約の直前まで「会社を譲渡すること」を社員株主に伏せてM&Aを進めました。基本合意後も破談となる可能性はゼロではありません。オーナー経営者が「破談になって社員株主をガッカリさせたくない」と配慮しての判断でした。そこまで社員を想っての判断が実り、売却に反対する社員株主は一人もおらず、むしろ「素晴らしい譲渡先を選定していただいた」と感謝していたそうです。

社員株主の方々にも納得されるような買い手企業とどのように出会うか、社員株主の方々にいつ、どのように伝えるかなどについては、M&A経験が豊富な専門家にご相談されてはいかがでしょうか。

本記事は、M&A情報誌「STRIKE」No.36 より再構成しております。