Smolt(スモルト、宮崎市)は宮崎大学発の養殖漁業ベンチャー。2019年4月、「水産資源と水産業のサステナブルな関係を構築する」をミッションに、同大大学院農学工学総合研究科1年の上野賢氏が立ち上げた。世界でも例を見ない高級魚サクラマスで、陸上の水槽と海上の生簀(いけす)を使った循環型養殖に成功。最先端の養殖技術が高く評価されている。
サクラマスはヤマメとしても知られる。両方とも同じ魚だが、ヤマメは成長しても海には降らず一生を河川で過ごす河川残留型(陸封型)の個体を指す。そのため体長も30cm程度と小さい。一方、成長すると海に出る降海型のサクラマスは全長70cmにも達する。
ヤマメは小型魚なので唐揚げや酢漬け、塩焼きなどで食べられるが、大型のサクラマスは煮付けやムニエル、刺身や富山名産の「鱒寿司」など高級食材として利用される高級魚だ。最近では漁獲量が激減している上に、天然物にはアニサキスなどの寄生虫が多いため(寄生虫は-20℃で24時間の冷凍をすれば死滅する)、養殖のニーズが高まっている。
サクラマスの養殖は各地で実施しているが、ほとんどは魚卵から孵化(ふか)させ、稚魚や幼魚の状態で河川に放流している。しかし、自然界に放つため放流数の割には回帰数が少ないなど効率が悪く、回帰して捕獲したサクラマスも寄生虫リスクが高いなどの問題があった。