ルラビオ(広島県東広島市)は、広島大学発のバイオ畜産技術ベンチャー。島田昌之同大学大学院統合生命科学研究科教授らのグループによる研究成果をもとに、2021年4月に設立した。島田教授が社長を兼務する家畜の精液冷凍保存を手がける同大学発ベンチャーの広島クライオプリザベーションサービス(同)が33%を出資しており、いわば「兄弟会社」となっている。
ルラビオは家畜のオスとメスを産み分ける事業を展開する。応用するのは受精するとメスになるX染色体を持つ精子(X精子)と、オスになるY染色体を持つ精子(Y精子)を仕分ける技術だ。島田教授らのグループが2019年に発表した。
島田教授らのグループはX精子だけに外部刺激と反応する受容体があることを発見。採取した精子を受容体と結合する薬剤に投入し、沈殿したX精子を分離。これらの精子をメスに人工授精することで、X精子ならメス、Y精子ならオスという具合に産み分けが可能になる。
同社は豚から事業化に取り組む。牛では細胞分離装置の「セルソーター」を利用したオスとメスの産み分けが普及しているが、装置が高価で価格の安い豚では採算が合わないため使われていない。そこで豚向けに、精子を分離する薬剤と分離に使う簡便な器具をセットにした低価格製品を開発することにした。
同キットを利用した場合のオスとメスの産み分け精度は約7割という。同社に出資する広島クライオプリザベーションサービスの顧客を対象にした産み分けの実証実験からスタートし、3年以内に正式発売する計画だ。価格は未定だが、5年後に年間10億円の売り上げを目指すという。
ルラビオは2021年4月から国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「研究開発型スタートアップ支援事業」に採択されている。
2021年6月1日にはNEDOとオープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)が開催したスタートアップ企業の最新技術を紹介するイベント「第39回NEDOピッチ」に参加した。FoodTech(フードテック)で優れた技術を持つ企業としてプレゼンテーションを実施。効率的な食糧生産や高品位のブランド肉の開発などにつながる技術として注目を集めたという。
食肉生産の効率化は日本だけでなく、海外の畜産業でも大きな課題だ。同社では豚産み分けの市場規模は日本だけでも約16億円、世界では数千億円とみている。誕生したばかりの大学発ベンチャーだが、グローバル市場の獲得も期待できるだけに今後の展開が楽しみだ。
文:M&A Online編集部
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