大学発ベンチャーの「起源」(48) 未来シェア

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未来シェア(北海道函館市)は、公立はこだて未来大学発のICT(情報通信技術)ベンチャー。2016年7月の設立以来、世界初となるAI(人工知能)による配車システムの社会実装に取り組んでいる。同技術を武器に、世界の新たな潮流となっているMaaS(Mobility as a Service)の実現を目指す。

「交通弱者」の社会問題をAIで解決

MaaSとは個々の乗客が呼び出したり呼び止めたりして利用するタクシーのような「デマンド交通」と、路線バスのような「乗合交通」のメリットを生かした次世代の交通管理システム。現在、公共交通機関の使い勝手が悪い地域では運賃の高いタクシーを呼ぶか、本数が極めて少ないバスや電車を長時間待って利用するしかない。

未来シェアでは刻々と変化する利用者の移動要求に合わせて、AIがリアルタイムで乗り合いタクシーやバスなどの走行ルートを決める「SAVS」の開発に成功。フルオンデマンドでリアルタイムに配車が可能なシステムの実証実験を実施したのは、同社が世界初という。

乗客の送迎中に配車要求受けても、新たに効率的な巡回ルートを再計算するので、利用者にとってはいつでも乗れ、運輸事業者にとっては空車率が下がり限られた車両でも最大限の輸送効率を実現できる「一石二鳥」の配車システムだ。

「SAVS」はバスや鉄道が廃止された過疎地などで、運転免許を返上あるいは取得していない住民の足として期待されている。同社は地元・函館市の公共交通問題を解決するために設立された。同市でも中心部を除けば、乗客が減ってバス会社が運行本数を減らし、本数が減ると不便になって乗客が減り、さらに本数が減るという悪循環に陥っていた。

日本の地方都市が直面するこうした社会問題を解決できるとあって、同社の技術は引っ張りだこだ。現在までに全国50カ所以上の地域で実証研究が取り組まれ、北海道はじめ10カ所以上の地域で実装されている。

経済産業省の補助事業で群馬県や栃木県などのデイサービス利用者が送迎車の空き座席に同乗して買い物や外出ができるドアツードアのリアルタイム配車サービスや、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のAI社会実装プロジェクトなどでの実証実験にも参画している。

2021年12月には「はばたく中小企業・小規模事業者300社」2021に選ばれた。MaaSは世界最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車も力を入れている分野。バス・タクシー会社だけではなく、自動車メーカーとの共同研究や事業コラボレーションも期待できそうだ。

文:M&A Online編集部

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