大学発ベンチャーの「起源」(43) リージョナルフィッシュ

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リージョナルフィッシュ(京都市)は京都大学発のバイオ水産ベンチャー。創業者の1人で同社最高技術責任者(CTO)の木下政人京大院農学研究科准教授と近畿大学水産研究所の家戸敬太郎教授らによる共同研究で開発した魚類ゲノム編集育種技術をもとに、2019年4月に設立した。

ゲノム編集で食べられる部位が1.2倍以上に

もう1人の創業者である梅川忠典最高経営責任者(CEO)も京大の経営管理大学院出身者で、デロイトトーマツコンサルティングで経営コンサルタントとして勤務した後に、産業革新機構でプライベートエクイティ投資や経営支援に従事した「経営のプロ」だ。

同社の強味はゲノム編集で、より商品価値の高い養殖魚を生み出せること。従来は突然変異で誕生した優良形質を持つ個体を選び、それらを交配して品種改良をしていた。同社はターゲットの遺伝子だけを切り出し、特定の機能を失わせる「欠失型ゲノム編集」を応用して養殖魚に適した品種を生み出す。

この技術を使えば、従来の手法では30年かかった品種改良を、わずか2~3年で完了できる。水産物の超高速品種改良を可能とする新しい技術だ。同社のゲノム編集は遺伝子組換えと違い自然界でも起こりうる変化であり、安全性が従来の食品と同程度で生物多様性にも悪影響を及ぼさないことが確認されているという。

リージョナルフィッシュが開発した可食部増量マダイは、筋量を抑制する「ミオスタチン遺伝子」を欠失させた。食べられる部位が通常の養殖マダイに比べると約1.2倍から最大で1.6倍となり、飼料利用効率が約14%改善するという。同社はゲノム編集で品種改良したマダイを「22世紀鯛」と名付けた。

ゲノム編集して可食部を増量した「22世紀鯛」(同社ニュースリリースより)

リージョナルフィッシュの可食部増量マダイは2021年9月17日に厚生労働省と農林水産省への届出を完了し、国の手続を経て上市する世界初のゲノム編集動物食品となった。同社は「いま地球に、いま人類に、必要な魚を。」をミッションに、世界の食糧問題や衰退する国内水産業が直面する課題などの解決を目指している。

同社は2021年8月に「大学発ベンチャー表彰2021~Award for Academic Startups~」の経済産業大臣賞を受賞した。今後は大手企業や大学・研究機関との提携を通じて、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT) 技術を活用した「スマート養殖システム」の開発を通じて水産養殖業の自動化・効率化に取り組む。

文:M&A Online編集部

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