日本のビジネスパーソンは「個が弱い」といわれる。周囲の空気を読んでばかりいて、自分をあまり主張しない人が多い。グローバル化が進む中で、自分の価値を高める努力をしないと、激烈な競争からたちまち脱落する。自分を磨き「個を強く」するためにどうすればいいのか。

コーチといえばスポーツの世界の指導者を連想するが、企業社会にも一人ひとりのビジネスパーソンの能力を最大限に引き出すプロがいる。ガンガ-総合研究所(東京・六本木)代表取締役の藤井義彦さんは、日本では数少ないエグゼクティブ・ビジネス・コーチ。現場のリーダーや経営者を対象にコーチングを行っている。

「滅私奉公」から「活私奉公」へ

企業に問題の解決方法を指南し戦略を提示するコンサルタントに対し、コーチングは対話を通じて相談者の願望や目標の達成を支援する。エグゼクティブ・コーチの藤井さんは、クライアントの自己変革をサポートするコミュニケーション技術の専門家でもある。

神戸生まれ。慶應義塾大学、スタンフォード大学の二つの大学を卒業した。鐘紡に入社し、25年間繊維部門の営業に従事。在職中にハーバード大学に短期留学、ビジネススクールAMP(上級マネジメントプログラム)修了。帰国後、一つの会社に身も心も捧げる日本的な働き方「滅私奉公」に疑問を抱き、自己実現と会社貢献の両立を図る「活私奉公」を目指して、定年を待たず55歳で退職した。

「トップの経営姿勢、人事のドロドロに嫌気がさしたということもあります。このまま鐘紡に残って立て直すにしても10年はかかる。その間に僕のような人間ははじき飛ばされて、結局同じ穴のムジナになる。それより自分の経営哲学を発揮できることをやりたい」と外資系企業の社長に。それまで赤宇経営だった会社を初年度から黒字にしたが、敵対的な買収で乗っ取りに遭ったのを機に、62歳の時に辞任。

これだけの超エリートであれば、経営コンサルタントとしても十分通用する。だが「いい提案をしても実行されないことが多く、まったく面白くない。実行まで責任を持つコンサルタントをやるか、経営者の意識を変えて主体的に行動してもらうか悩んだ」末に、最終的に選んだのが後者だった。2003年にガンガ-総合研究所(GRI)を設立し、ビジネス・コーチングの活動を始めた。(次回は5月7日掲載)

文:大宮知信