相続税対策といえば、すぐに思い浮かぶのがアパート経営。老後の資金稼ぎのためにアパートを建てる人も少なくない。ところが、ここへきて相続税対策を目的とした賃貸用アパート建設にブレーキがかかり始めているという。入居者を確保することができず、全国各地でアパートの空室が問題となっているのだ。そこで引っ張りだことなっているのが、大家さんの経営指南役。不動産コンサルタントの雨宮憲之さん(55)は、アパート経営のノウハウを伝授するだけでなく、自身も5物件を所有する「戦略大家」。特に不動産投資、賃貸経営分野において自分の体験に基づいた実戦的な手法には定評がある。

元ジャーナリストの大胆転身

当欄でさまざまなコンサルタントの方を紹介してきたが、アパートの大家さんに経営ノウハウを伝授する専門家の存在は寡聞にして知らなかった。「オーナー・インテリジェンス」(神奈川県川崎市)代表の雨宮憲之さんは、賃貸住宅の経営に関する問題解決を指導する不動産コンサルタント。自らも賃貸アパートを経営する傍ら、不動産コンサルタントとしてアパートやマンションのオーナーにアドバイスしている。

雨宮さんは開口一番、「この業界ほど企業努力をしていない業界はないですよ」と呆れた表情で話す。「アパート経営は断じて不労所得ではありません。入居者に快適な居住空間を提供して、その対価をもらう立派なサービス業です」

雨宮さんも当初、賃貸業は不労所得だと思っていたが、実際にアパート経営を始めてみると、単なる老後の資金稼ぎではなく、やり甲斐のある面白い仕事であることが分かった。

地方局のアナウンサーを4年ほど務めた後、毎日新聞の記者に転職。高松支局から大阪本社に異動となったが、間もなく退職。「周囲の猛反対を振り切って」米国に留学し、ワシントンDCの学校で2年半学んだが、英語力の問題で壁にぶち当たり、挫折。

帰国後、生活のため教育関連の映像を制作する中小企業に就職。当時、霞が関ビルに事務所がある会社が支払っている高額な賃貸料に驚き、黙っていても毎月家賃収入がある「家主はいいな」と思ったのが、不動産投資に興味を持つきっかけとなった。

「電車の窓の外を見ると、マンションやアパートがたくさん建っているのが見える。これだけあるんだから一つぐらいは私が持っていてもいいのでは」と、神奈川県座間市の築30年の古いアパートを1棟まるごと2000万円で購入したのがスタート。週末起業的な副業だったが2009年に会社を辞め、専業大家になった。

文:大宮知信