悪意のあるウソを見抜く

日本は本音と建て前を使い分ける人種。営業や交渉事などで、相手が本当のことを言っているのかどうかを見極めるのは重要だが、大事なことは悪意のあるウソを見抜く力だ。クリアウッド代表取締役の森透匡さんは、元刑事ならではのスキルを使って問題解決する人事コンサルタントだ。危機管理的な面からも、元刑事の真実を探る捜査技術は役に立つ。経営者や人事担当者向けに、年間180回ぐらい「刑事塾」と題する講演やセミナーを行っている。

独立して7年目。最初からビジネスがスムーズに展開したわけではない。「1年目はもう大変でした。どんどんお金が出ていく。これはやばい、何とかしないといけないとお尻に火が付いて、毎日本を読んで勉強をして」ビジネスに役立てられるよう体系立てたカリキュラムを作り、コンサルタント業を開始した。 

犯罪防止や事件の捜査が仕事の警察とビジネスマンが対象のコンサルタント活動とは、仕事の内容が大きく異なる。今の仕事には、自分の人生を自分自身でコントロールしていく爽快さがある。

「企業の人を相手に、刑事時代のノウハウを提供するのは面白いですよ。僕のスキルで問題が解決し、会社が発展できれば、僕も中小企業の経営者としてうれしいなと」 

警察官も含めて多くの公務員は定年まで勤める。転職する人は極めて少ない。「今、定年延長の話が出ているけど、長く勤めると給料も下がる。そうすると、じゃオレも起業しようかなと」、真似する人が出てきて競争相手が増えることも考えられる。

講師料は基本料金があるが、「ご予算によってご相談に応じている」そうだ。警察官時代と比べて収入は「数倍になった」。これまでの経験とスキルを体系立てたものにし「若い刑事に教えることができれば捜査技術の向上にも役立つ」と、27年間在職した警察への恩返しも考えている。

国会で統計数字の不正が問題になっているが、政府を追及する野党議員に「ウソの見抜き方」を伝授してほしい。そうすればこの国の政治はもっとよくなると思う。冗談交じりにそんなことを言ったら、「それは僕の仕事じゃありませんよ」と苦笑いを浮かべた。(おわり)文:大宮知信