プレゼンテーションは苦手という人が多い。重役がそろった会議でプレゼンをしなければならない日が近づくと胃が痛むという人もいる。優秀なビジネスマンあればあるほど、会議にとどまらず昇進試験、商品の売り込み、新しい企画の提案など、人前で意見を述べる場面は数限りなくある。そういう人のために「プレゼンのことなら何でもお任せ下さい」という人がいる。ナレッジステーション(東京・日本橋)代表の伊藤誠一郎さん(47)。プレゼンテーションの基礎知識と実践法を指導するプロフェッショナルだ。

伝える技術で人生を変える

新しいサービス、商品、企画を提案する。プレゼンは営業職だけでなく、ビジネスパーソンだったら必須のスキルだ。自分の価値を正しく伝える能力がキャリアを左右するといってもいい。プレゼンテーション・コンサルタントの伊藤誠一郎さんが10年前に会社を辞めて思ったことは、日本人は「伝え下手」ということだった。

「日本のビジネスパーソンの8割がプレゼンは嫌いだと言っているそうです。欧米はもちろんアジアの国だって8割は人前に出て自己発信するというのに、こんな国ないですよ」

病院に医療器具の管理システムを売り込む中小企業の元営業マン。忙しい人たちを相手に現場で伝える仕事だから、短い時間で簡潔にポイントを絞って、正確な情報を的確に伝える必要がある。圧倒的優位に立つ大手を押しのけ、伊藤さんの競争入札での勝率は8割を誇る。医師や看護師を相手に、年間100回以上はプレゼンをしたという。

プレゼンの技術は医療の現場で鍛えられた。若い時の苦労は買ってでもせよなどというが、伊藤さんは中小企業でキャリアを積んだからこそチャンスが広がった。

今でこそプレゼンのプロだが、子供の頃は赤面症で恥ずかしがり屋だった。「規模の小さい会社に入って、自分自身プレゼンであえて自分を矢面に立たせ、勇気を持って自己発信することで人生が変わった。独立は勤めている時から考えていて、プレゼンを中心に伝える技術を指導することで、いろんな人の人生を変えてみたいな」と考え、2009年に会社を辞めてプレゼン講師のマネジメント会社「ナレッジステーション」を立ち上げた。だが独立はしたものの、3年間は仕事らしい仕事がなかった。(次回は3月26日掲載)

文:大宮知信