深刻な郊外の空室問題

不動産コンサルタントの雨宮憲之さんは、自分でもアパートやマンションなど5物件を所有する大家さん。土地があるから建て売りかアパートでも建てて、左うちわで老後を過ごそうという人ではなく、アパート経営をビジネスとして考える「戦略大家」だ。

不動産業は長らく貸し手市場の時代が続いたが、いまや借り手市場で物件が有り余っている状態。土地があるとアパートでも建てるかと気楽に始める人が多いが、家賃収入で悠々自適の生活どころか、巨額の借金だけが残ってしまったということになりかねない。

「以前はリフォーム対策が多かったけど、最近のテーマは圧倒的に空室問題です。けっこう頭を抱えている方が多いので、そのアドバイス的な話をしています」

人が流れ込んできている東京はまだ需要がある。深刻なのは地方や首都圏の郊外。

「箱物行政と同じで、建物さえ作れば儲かると思っている。不労所得という発想ですね」

雨宮さんも、当初アパート経営は「不労所得」を稼ぐための副業だと思っていたが、大家になって「そんな甘いものではない」ことが分かった。夜逃げや滞納などトラブルはしょっちゅうある。アパートの壁から水が噴き出して慌てたこともある。

ただ、まったく可能性がないかといえば、そうでもない。企業努力次第で空室は解消することができる。黒字経営も可能だという。

「お客様である入居者に、自分の物件を選んでもらうための魅力を作るところから始めないと、今の時代、見向きもされません。例えばエントランスに季節の花を飾るだけでも雰囲気が違ってくるじゃないですか」

岩手県の放送局でアナウンサー、毎日新聞記者を含めて10数年、ジャーナリストとして仕事をしてきた経験が役に立っている。取材活動で培った調査力をもとに、独自のエリアマーケットを手法を構築し、「物件を買う時には、かなり綿密にマーケティング調査をして稼働状況の悪い地域は避け、いい物件を選んで買っています」

アパートの稼働率は全国平均が約80%なのに対し、雨宮さんが所有している物件は「過去10年間で96%を超えている」という。やっぱり「戦略大家」なのだ。

文:大宮知信