東京の下町、浅草が華やかになった感じがする。着物姿の若い女性を多く目にする。元経営コンサルタントの畑和男さん(70)が3年前、浅草で着物レンタルの専門店「浅草愛和服」を開業した。着物、帯、肌襦袢など着物一式に、着付け、ヘアーセットのサービス込みで3800円。客の多くは訪日外国人で、中国語が話せるスタッフも常駐しており、浅草散策の後は写真をプレゼントする。こうしたきめ細かなサービスが受けて、人気はうなぎ登り。定年退職後の起業で「もし3カ月でダメだったらやめようと思っていた」が、結果は大成功。今では年間5万人が利用している。

定年後着物レンタルで独立

経営コンサルタントに勤めていた畑さんは定年退職したら「年金もらって悠々自適」の老後を考えていたが、退職前に社長から言われた一言で、事業家の血が騒いだ。

「これからは和食とか和のビジネスに魅力があるといわれてる。畑さん昔、呉服屋さんに勤めていたことがあるよね。着物で何か新しいビジネスが出来るんじゃないか」

若かりし頃、呉服店で何年間か働いたことがある。「呉服屋さんは70過ぎの女性がバリバリ働いている。何もしないで家にいたら一気に老け込むのではないか」と起業を決意。和服だったら昔取った杵柄、多少の知識はある。しかし業種は同じでも、業態が異なる。呉服業界で働いていた時、客からこんな話をよく聞いた。「着物は好きだけど、着ていく場所がない、一人で着ることができない、着た後の始末が面倒」という人が多い。

そこで京都に行って和服のレンタルビジネスの実態を調査。外国人観光客に受けているのを見て「これはいける」。外国人観光客が多い浅草でやってみよう」と2015年4月16日、東京・浅草に観光用きものレンタル専門店「浅草愛和服」を開業した。

呉服屋の経験があるとはいえ「売る」仕事から「貸す」方への転換だ。知名度がなく、この業界では後発。そこで目を付けたのが、インバウンド(訪日観光客)。

親日派が多い台湾の女性にターゲットを絞った。料金は着物、帯、肌襦袢など全部込みで3800円。オプションによる追加料金なし。着物は常に300着以上を用意。プロの着付師が利用者に合わせた着付けと帯結びを行っている。浅草の街を散歩してきた後は、記念写真のポストカードをプレゼント。

外国人をターゲットに絞った戦略はズバリ的中し、8対2の割合で外国人観光客が多い。当初、個人事業として始めたが、集客に手応えを感じ翌年、会社組織にした。(次回は9月4日掲載)

文:大宮知信