東証一部上場企業のような効率的な市場では、本来裁定機能が迅速に働くため、EBITDA倍率で2ポイントに近い割安評価が成立することは少し考えにくいためです。

もし、6倍台(直近の2018年でも7.1倍)という評価が、「市場のゆがみ」ではないとしたら、6倍台が適正、という捉え方になります。つまり、残念ながら日本企業(を代表する東証一部企業群)は、潜在的成長可能性がこれまでより低いとみなされている、ということになります。

「割安評価」なのか「身の丈評価」なのか、結局のところ未来は誰にも分からないのですが、次のグラフを見ると一つのヒントがありそうです。

図3:「東証一部株式会社」の企業価値(EV=純有利子負債+株式時価総額)の推移

出所:CapitalIQデータベースよりイグナイト作成

注:少数株主持分情報がないため、企業価値は簡便的に株式時価総額と純有利子負債の合計額で算定しています。また、純有利子負債算定における現預金は、簡便的に全額を控除しており、必要運転資金分析は行っていません。

このグラフで、純有利子負債額の過去18年の推移をみると、150兆円~200兆円前後で推移してきた純有利子負債が、2016年3月にマイナスに転じています。純有利子負債がマイナスということは、現預金超過を意味します。

なお、この現金超過の源泉は2014年~2016年に獲得・蓄積された営業キャッシュフローであり、多くはアベノミクスによる景気回復の恩恵と推察されます。このような現預金の余剰自体(厳密には必要運転現預金を除く余剰資金であり、本分析では捨象している)は、価値を生まないというのがファイナンスの考え方ですので、その分EVが低くなる原因となります。