なぜ1000店展開の「さくら薬局」が破綻に追い込まれたのか?

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のしかかる借入金返済、続く誤算

最近では買収した薬局の調剤報酬債権を担保に融資を受け、新たな薬局の買収資金を賄っていたという。同債権は社会保険や国民健康保険などから受け取る薬局の売掛金で、通常は調剤月の翌々月の20日以降に入金される。

その債権を手数料と引き換えに早目に現金化するわけで、一般企業では約束手形の割引に近い。本来、調剤報酬債権は、調剤薬局の薬剤仕入れや従業員の給与、店舗の家賃や光熱費などに充(あ)てるべきだ。それを企業買収に流用するのだから、債権を持って行かれた薬局は資金繰りに窮することになる。

薬価の引き下げに加えて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大に伴う不要不急の通院自粛、厚生労働省が「医薬分業」を見直して病院敷地内での薬局併設を認めるなど想定外の事態も多く、店舗網を拡大しても利益が出ない状況が続いた。そこに多額の借入金の返済がのしかかり、経営が破綻する。

上場を維持していれば、借入金の返済に追われることもなかっただろうし、何より株主から利益の出ない拡大路線に「ノー」が突きつけられたはずだ。「目先の業績にとらわれず、迅速な意思決定が可能になる」としてMBOやTOB(公開株式買い付け)による上場廃止が増えている。クラフトの場合、それが「裏目」に出てしまったようだ。

とはいえ「さくら薬局」の営業は続いている。店舗網の整理は避けられないかもしれないが、高齢化が進む中、薬局は重要な社会インフラだ。閉店すると困る利用者も多い。事業再生ADRでの経営再建に期待したい。

文:M&A Online編集部

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