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「CRAZY WEDDING」が結婚式場運営に乗り出す理由
自社会場を持たず、オーダーメイド型の結婚式をプロデュースしていたCRAZY WEDDINGが、「アンフィニ―ル表参道」の運営へと乗り出します。会場を持たないというポリシーを捨てたCRAZYは2022年までに売上高100億円達成を目指します。
ヤフー<4689>が、レシピ動画「クラシル」を運営するdelyを子会社化しました。ヤフー傘下のYJキャピタルがすでに投資を行っていましたが、新たに93億円を出資。「gumi ventures(gumi系)」や「Pegasus Wings Group(AnyPay創業者・木村新司氏のファンド)」などの既存株主から、株式を買い取りました。これにより、15.9%だった所有割合を45.6%にまで引き上げています。ヤフーはdelyに役員を派遣し、営業利益を決算に取り込むこととなります。ヤフーがdelyを取り込んだ理由は2つあります。
動画レシピは国内のスタートアップ界隈では有名な事業領域です。「クラシル」のdelyと「デリッシュキッチン」のエブリーが激しく争う構図(KDDIに買収されたエブリーの記事はこちら)。その過熱ぶりは資金調達額の大きさを見るとわかります。下の図はスタートアップのデータベース「entrepedia」がまとめた、2017年の国内資金調達状況。delyが5位の63.6億円、エブリーが7位の47.6億円です。
投資家や市場から期待はされているものの、業績がついてきていません。delyはこんな感じ。
売上高 | 営業損益 | |
2017年10月期 | 2億8900万円 | △30億6700万円 |
2016年10月期 | 2400万円 | △1億5000万円 |
2015年10月期 | 700万円 | △3億円 |
※ヤフー「dely 株式会社の連結子会社化に関するお知らせ」より
「デリッシュキッチン」のエブリーも、直近の決算では23億円の赤字を計上しています。資金調達額からみて期待は大きい。その一方で、業績は悪い。それはなぜなのか。そしてそこから、ヤフーがどのような未来を描いているのかが見えてきます。
dely代表の堀江裕介氏はスタートアップでは有名な経営者。1992年生まれで、慶応大学在学中の2014年に起業。2016年にクラシルをスタートしました。リリースから2年で1000万ダウンロードを突破。2018年6月の時点で1200万ダウンロードを超えています。FacebookやTwitterが2000万なので、比較するとそのスピードの速さがわかります。ユーザーの獲得と資金調達が上手くいきはじめると、「20代で1000億円の企業価値創造したい」などと発言し、起業家のタマゴたちからもてはやされたりもしました。
クラシルがユーザーに深く浸透した背景には、アプリを中心に据えたdelyの戦略がありました。従来のメディア運用は大きく2つに分かれます。1つ目がSEOを軸としたもの。もう1つがバイラルメディアです。SEOはGoogleなどの検索エンジンに最適化したサイトを作りこみ、ユーザーの検索意図を見越したコンテンツをバラまいて誘い込もうというもの。クックパッドがまさにこれでした。グルメサイトの「ぐるなび」などもこの部類に入ります。先行した企業に強みのあるモデルとなります。
バイラルメディアはSNSを活動の中心にしたもの。SEOは大量のコンテンツが必要となり、成果を出すまでに時間がかかります。バイラルメディアはSNSの拡散力を利用して、最小限の力でユーザーを引き寄せようとするものです。「目から鱗が落ちる豆知識」や「渾身の一発ギャグ」を投稿し、”いいね”や”リツイート”などによるバラまき効果を利用するのです。それをフックとして、運営しているメディアへとユーザーを誘い込むのがこのモデルとなります。
当初、delyはバイラル寄りの運用をしていました。動画をSNSで拡散させる「分散型メディア」といわれるものです。同社はそこから一歩進んで、ユーザーを囲い込むためのアプリへと注力したのです。なぜなら、SEOもバイラルメディアもユーザーをメディアに誘い込むという点では同じですが、離脱するという問題点はどうすることもできないからです。アプリはそれを解決する手段として極めて有効でした。
自社会場を持たず、オーダーメイド型の結婚式をプロデュースしていたCRAZY WEDDINGが、「アンフィニ―ル表参道」の運営へと乗り出します。会場を持たないというポリシーを捨てたCRAZYは2022年までに売上高100億円達成を目指します。