米シリコンバレーを中心とする海外のベンチャーおよびテクノロジー関連のM&A情報を、TransCap代表で現地在住のコンサルタント坂崎昌平氏がレポート! 今回は、相次ぐ大型M&Aとその共通点は? この2週間も大型M&Aが次々と発表された。半導体分野では、低消費電力CPUのARMをソフトバンク(Softbank)が買収、アナログ半導体のLinearをAnalog Devicesが買収など詳しく見ていく。2016年7月18日週および7月25日週の動きをレポート。

<ハイライト:相次ぐ大型M&Aとその共通点は?>

 この2週間も大型M&Aが次々と発表されました。

 半導体分野では、低消費電力CPUのARMをソフトバンク(Softbank)<9984>が$32Bで、アナログ半導体のLinearをAnalog Devicesが $14.8Bで買収します。ARMもLinearも営業利益率が40%を超える優良企業で、 バリュエーションのリスクはありますが、買収と同時に買い手の収益に貢献します。どちらもモバイル向けに強く、IoT関連でも成長が期待されています。

 このような優良企業がなぜ買収する側でなく買収される側に回るのか? ARMは本拠地がある英国のEU離脱、Linearは創業者の高齢化による長期的な競争力維持への不安があったといわれています。

 オラクル(Oracle)が中小企業向けクラウドERPのNetSuiteを$9.3Bで、ユニリーバ(Unilever)がひげそり直販サイトのDollar Shave Clubを$1Bで買収します。急ピッチでクラウドへのシフトを進めるソフトウェア企業のオラクル、Eコマースやバイラルマーケティングへの対応が必要な日用品メーカーのユニリーバにとって、今回の買収は新規事業開発のアウトソーシングという側面があります。

ちなみに、NetSuiteの創業者はオラクル元幹部で、スピンイン型の買収ともいえます。買収先企業はいずれも赤字ですがグローバルな営業組織の活用など経営資源を投入することで成長の加速や収益性の改善が期待できます。

 米ヤフー(Yahoo!)のインターネット事業をVerizonが$4.8Bで買収することになりました。また、ダイムラー(Daimler)が配車アプリのHailoの発行株式の60%を取得します。通信キャリア大手のVerizonは、昨年6月にメディア広告大手のAOLを買収しており、これを米ヤフーと統合して収益構造の多角化を進めます。

 メルセデス・ベンツで知られる自動車メーカーのダイムラーは、傘下にMyTaxiという配車アプリ事業があり、これをHailoと統合してウーバー(Uber)やLyftといった競合に対抗します。どちらの案件も一見すると本業から離れていますが、M&Aで戦略子会社の事業を強化するパターンといえます。

 必ずしも大型案件ではありませんが、職業SNSのLinkedinが営業コンテンツ共有アプリのPointDriveを、人事管理プラットフォームのWorkdayがデータ解析のPlatforaを、クラウドCRMのセールスフォース(Salesforce)がITインフラ監視のCoolanを買収します。いずれも買収先企業の独自技術を取り込んで自社サービスの差別化や品質向上につなげる戦略です。

 第7回のハイライトでも取り上げましたが、Linkedinはマイクロソフト(Microsoft)に買収される予定です。このように買収されつつある会社が買収を仕掛けているのもダイナミックで興味深いです。