「記述情報」の概要

記述情報の代表的なものとしては、「経営方針・経営戦略等」「経営成績等の分析」「リスク情報」などが挙げられます。

1つ目の「経営方針・経営戦略等」とは、企業が事業目的をどのように実現していくのか、どのように中長期的な企業価値を高めていくのかを説明するものです。

2つ目の「経営成績等の分析」はMD&A(Management Discussion and Analysis)とも呼ばれる記載項目です。「経営方針・経営戦略等」に沿って事業を行った結果、当期においてどのような成果を上げたのか、経営者の視点から要因分析するものです。

3つ目の「リスク情報」は翌期以降の経営に影響を及ぼすリスクや不確実性のうち重要と考えられるものを開示するものです。

「記述情報の開示に関する原則」では、これらの3つの開示で共通に求められる事項として取締役会や経営会議における議論の反映が提示されています。

投資家が取締役会や経営会議における企業の現状認識や経営戦略等の理解に必要な情報を得ることが期待されていると換言できます。MD&Aという呼称にも表れているように経営陣の視点を明確に伝達することがポイントといえるでしょう。

M&Aに取り組む企業にとって参考となる事例

「記述情報の開示に関する原則」と同時に、記述情報の開示におけるベストプラクティスを紹介するものとして「記述情報の開⽰の好事例集」が公表されています。

好事例集では、例えば「経営⽅針、経営環境及び対処すべき課題等」の開⽰例として、コニカミノルタ株式会社の統合報告書(2018年度)が取り上げられています。同社では、事業分野を「基盤事業」「成長事業」「新規事業」の3つに分類した上で、それぞれの営業利益の推移をグラフ付きで掲載しています。

産業印刷、マーケティングサービス、医療ITサービスなどが含まれる「成長事業」においては、M&Aの成果の極大化、デジタル顧客価値の深耕と収益拡大といった具合にグループ全体の戦略における当該事業の位置づけを明確にしています。

また「CEOメッセージ」として各事業の中長期における成長戦略を示しています。まさに、経営者の視点で企業戦略を投資家にわかりやすく伝達する事例であり、ベストプラクティスと呼ぶにふさわしいものと考えられます。

記述情報に関して開示の「ルール」を定めると、各社が横並びの定型文の記載に終始することは、これまでの実務を見ていれば想像に難くありません。「記述情報の開示に関する原則」があくまでも開示の「プリンシプル」を定めたものである理由はそこにあるのです。

文:北川ワタル