合併比率に着目した裁定取引とは

上場企業同士の合併が発表されると、各当事会社の株価に大きな影響を与えることが少なくありません。注目買いや期待買いで株価が上昇するという面もありますが、特に注意したいのが当事会社間の株価の比率です。

つまり、合併比率が公表されると、各当事会社の株価がその比率に寄せてくるということです。例えば、存続会社をA社、消滅会社をB社とする合併において、B社株式1株につきA社株式0.7株という合併比率が公表されたとします。

この場合、B社株式を10株保有する株主は、将来の合併期日にA社株式7株を受け取ることになります。A社の株価が800円、B社の株価が500円であったとすれば、B社株式を5,000円分(=10株×500円)保有する株主は、A社株式を5,600円分(=7株×800円)受け取ることになります。

もし、この株価が放置されるなら、投資家は市場でB社株式を10株買い、同時にA社株式(仮に貸借銘柄)を7株売ることにより、リスクなく、差額の600円(=5,600円-5,000円)を得ることができます。もちろん、こうした裁定の機会が放置されることはなく、両社の株価は合併比率をもとに収束することになります。

合併比率を決定する際の考慮要素

合併比率は、基本的には存続会社および消滅会社の株主双方に重大な経済的利益や損失が生じないように決定されます。そのためには、専門家の評価業務などを活用して、当事会社の適正な株価を算定します。適正な株価を算定する際には、純資産、市場での株価、収益力などが考慮されます。

例えば、存続会社の適正な株価が350円、消滅会社の適正株価が200円と評価された場合、合併比率は消滅会社の株式1株に対して存続会社の株式0.57株(=200円÷350円)ということになります。ただし、そうした理論的な株価だけで合併比率が決定されるわけではありません。

合併比率は合併後の株主構成にも直結するところですので経営権への影響度合いが検討されます。また、当事会社および株主における課税上の要件や「対外的に対等合併の形にしたい」などの思惑も絡んできます。合併における諸条件の中でも合併比率が十分協議すべき事項であることは間違いありません。

文:北川ワタル