他企業を買収するM&Aの過程では基本合意が結ばれたあと、買収先のより詳細な情報を調査するためにデューデリジェンスを行います。このデューデリジェンスの実施により、会計帳簿には記載されていない簿外負債が発覚することが多々あります。

簿外負債が発覚すると、当初の想定より対象会社の評価が下がることはもちろん、金額的影響が大きい場合には買収を断念することにもなりかねません。そこで、今回はデューデリジェンスで見つかる簿外負債の例をまとめてみたいと思います。

多額になりやすい労務関係の負債

経費のうち人件費の占める割合が大きい企業では、労務関係の負債計上が漏れていると多額の簿外負債が生じる可能性があります。労務関係の負債としては、例えば、退職給付債務、役員退職慰労引当金、賞与引当金などが挙げられます。従業員に対して一律に同じ処理をしていることが多いため、影響額が大きくなる傾向にあります。

・退職給付債務

退職給付債務というのは、従業員が将来退職した際に支払われる一時金や年金のうち企業が負担する義務を有しているものを指します。将来の退職時に支払われる退職金の金額を見積り、それを現在の価値に割り引いて算定するのが原則ですが、簡便的に期末時点で従業員が退職したならば支払われるべき退職金の額を集計する方法もあります。すでに年金資産として外部に積み立てているものがあれば、それを差し引いた実質的な負担額を対象会社の負債と考えます。

・役員退職慰労引当金

役員退職慰労引当金は将来の役員退職金に対する負担を計上するものです。その点、上記の退職給付債務とも似ています。しかし、従業員の退職金は労働の対価としての性質を持っているのに対して、役員の退職金は労働ではなく功績などに報いるための金員という性質を持っていることから両者を区別しています。対象人数は従業員と比べて少ないものの、役員1人当たりの退職慰労金額は多額になることが多いので、簿外になっている場合は注意が必要です。

・賞与引当金

賞与引当金は、文字どおり、賞与に対する負担を計上するものです。例えば、3月決算の会社で10月~3月の期間に対応する賞与を7月に支給するという規程になっている場合を考えてみましょう。事業年度末である3月末において、賞与はまだ確定した債務ではありませんが、すでに10月~3月の期間は経過しており、賞与の発生原因は存在しています。この場合、7月に支給される賞与に対する負担を会計上は認識するのが合理的ということになります。