会社は建物、機械、車両、備品など様々な固定資産を保有しています。M&Aによりこれらの固定資産を受け入れた場合、それぞれの固定資産にはどのような価額を付して帳簿に記載し、どのような方法で減価償却を行うのでしょうか。

減価償却の仕方によって決算上の利益や負担する法人税の額にも影響が及びます。本稿でM&Aと減価償却の関係について解説したいと思います。

そもそも減価償却が必要な理由は?

ここでは、そもそも減価償却とはどのような処理なのかを確認しておきましょう。例えば、配送用に100万円のトラックを1台購入したとします。この場合、トラックを購入した事業年度に100万円の全額を費用に計上する方法も考えられます。

しかし、トラックは将来の数年間にわたって使用されるのが通常です。それなのに1年目の費用だけが大きく、2年目以降の期間では費用がまったく発生しないというのは不合理とも考えられます。つまり、トラックを使用することで2年目以降の会社の収益にも貢献している訳ですから、費用も数年にわたって徐々に計上するのが合理的という考え方ができるのです。

そこで、トラックはいったん固定資産として貸借対照表に計上して、将来の使用が見込まれる一定の期間である「耐用年数」にわたって徐々に費用化していく方法がとられます。これが減価償却という処理の意味するところです。

M&Aでは固定資産の受け入れ方がポイントとなる

減価償却を行うためには固定資産の取得価額を明確にしておく必要があります。ところが、M&Aではその態様によって固定資産にどのような価額を付すかが異なります。M&Aの主要なスキームごとに固定資産の価額がどのように異なるのかを見てみましょう。

株式取得の場合

株式譲渡契約などを通じて株式を取得する場合、対象会社の会計処理や決算書には特に変化がありません。そのため、対象会社が固定資産を保有している場合、帳簿価額がそのまま引き継がれ、従来の方法で減価償却を継続することになります。

吸収合併の場合

吸収合併により対象会社の資産や負債を受け入れる場合、簿価で引き継ぐケースと時価で評価し直すケースがあります。親子会社間の合併のように企業結合会計にいう「共通支配下の取引等」に該当する場合には簿価で引き継ぎ、グループ外の会社を吸収する場合には時価で評価し直します。

事業譲渡の場合

事業譲渡は関連する資産や負債をまとめて移転する取引行為です。その点で吸収合併のような組織法上の行為とは異なります。しかし、資産や負債の評価という点では似たような考え方が採られます。つまり、「共通支配下の取引等」に該当する場合には簿価で引き継ぎ、グループ外の会社から事業を譲受するような場合には時価で評価し直します。