資金の流出を伴わずに事業再編やM&Aを実施する手法としては合併会社分割株式交換株式移転など様々なものがあるが、現物出資もそうしたスキームの一つに数えられる。「モノを出資する」という特殊性から評価や税務の課題も見え隠れする。今回はそのような現物出資に焦点を当て、概要およびM&Aとの関係を概観してみたい。

現物出資とは何か

現物出資とは金銭以外の財産をもってする出資のことを指す。ここでいう「財産」の範囲は幅広く、不動産や有価証券、棚卸資産その他の動産などあらゆる財産が含まれる。

出資するということは会社の株式を引き受けることを意味する。つまり、会社の株主になるということである。通常であればキャッシュを払い込んで株主となるところ、現物出資ではキャッシュ以外の財産を拠出して株主になる。

現物出資を無制限に認めると…

ただし、現物出資を無制限に認めてしまうと弊害も生じる。例えば、価値のない財産が会社に拠出された代わりに株式が発行されると会社の債権者や他の株主の利益を害することになる。

このような弊害を防止するため、一定額を超える財産については裁判所が選任した検査役が価額を調査するなどいくつかの制約が設けられている。検査役調査の手続は実務上の負担が大きく、通常は敬遠される。

ただし、会社法には検査役による調査が省略できるケースも定められている。その一つは、現物出資される財産が不動産である場合に不動産鑑定士の鑑定評価を受けているケースだ。また、有価証券も市場価格の範囲内であれば検査役検査は不要であるほか、それ以外の財産でも弁護士や公認会計士などの証明を受けている場合には検査役の調査が省略できる。

デット・エクイティ・スワップと現物出資

2017年8月、ブルームバーグ が「ゾンビ企業が生き返る」というキャッチーなタイトルで中国企業における債務の株式化の現状について報じた。債務の株式化はDES(デット・エクイティ・スワップ)とも呼ばれ、企業の借金を資本に変える手続である。債務の株式化は窮境に陥った企業の救済措置としても利用されている。

ブルームバーグの記事では、世界最大級にまで膨れ上がった中国企業の債務を削減するために政府が2016年に導入した債務の株式化プログラムがうまく機能していないという調査結果が紹介されている。同プログラムが投資家のリスクを高めている一方で不健全な企業が恩恵を受けているという内容だ。

実は、こうしたDESは、我が国の会社法上は債権の現物出資としての性格を持つ。例えば、経営不振の企業に対して融資を行っている金融機関が自らの金銭債権を現物出資して当該企業の株式を取得するという手続で債務の株式化を行うことができる。

DESは支援を受けた企業にとって恩恵があるだけでなく、支援を行った金融機関にとっても、通常の債権放棄では失ってしまうはずの資金回収の望みを将来につなぐことができるというメリットがある。