人を大切にする経営につながるMEBOという手法とは

首都圏や中部地方を中心に学習塾を展開する湘南ゼミナール<非上場>は、2017年7月5日付でMEBOの実施を発表した。

MEBO(Management and Employee Buy Out)は、経営陣と従業員が一体となって自社の経営権を取得する手法であるが、その活用事例は決して多いとはいえない。今回は、この「MEBO」という手法について解説したい。

従業員が資本参加するMEBOのスキーム

経営陣がファンドなどの支援を受けながら、親会社など旧株主から株式を取得して自社の経営権を掌握するMBO(Management Buy Out)という手法は、ニュースなどでも目にする機会が多いのではないだろうか。また、経営陣ではなく、従業員が主体となって経営権を取得するEBO(Employee Buy Out)という手法もある。MEBOはこれらMBOとEBOのハイブリッドともいえるもので、経営陣と従業員がともに経営権を取得する手法だ。

MBOやEBO、そして今回のテーマであるMEBOを実施する場合、典型的な法人による買収とは異なり、新たに株主となるプレイヤーが多数にのぼる。そのため、通常はSPC(特別目的会社)などの受け皿会社を作ることが多い。ケースによって登場するプレイヤーや法形式などは異なるものの、一般的に考えられるMEBOのスキーム概要を図示すると次のようになる。

図1:MEBOのスキーム

MEBOのスキーム
M&A Online編集部作成

独自経営やモチベーションアップに有効なMEBO

MEBOを利用するメリットとして大きいのは、経営陣や従業員が自身で会社に出資して資本参画することにより、モチベーションアップが期待できることである。また、所有と経営が一致することにより意思決定の迅速化も図られる。そのため、親会社から独立して自分たちの意思で会社を経営していきたいという思いを実現する手段として活用することが考えられる。

さすがに、すでに上場している企業においてMEBOを通じて一般投資家を含む多数の株主から経営権を取得するのはハードルが高いといえるが、親会社から円満に独立したり、事業承継の手段として創業者から株式取得したりするには、今後もっと活用されてよい選択肢かもしれない。また、ファンドが関与する場合には、当然、IPOやM&Aを通じたエグジットに向けた下準備としての性格も有することとなる。

湘南ゼミナールのMEBOが始動

湘南ゼミナールは神奈川県横浜市が発祥の学習塾であり、法人成りした1988年から数えても来年で30周年を迎える古参の学習塾運営会社だ。湘南ゼミナールの場合、2016年に就任した福村賢一社長が、将来の株式公開も見据えつつ、創業者から事業を承継する方法としてMEBOを選択した形となる。

今回のディールでは、独立系ファンド運営会社である雄渾キャピタル・パートナーズの支援を受けており、同社と湘南ゼミナールが共同で設立した株式会社szmホールディングスを受け皿会社としている。なお、この受け皿会社の所在地は雄渾キャピタル・パートナーズと同一の住所となっている。

今後、さらに従業員が受け皿会社に出資して資本参画する予定との発表であり、最終的な株主構成比率などは不明であるが、順調に教室数と売上規模を拡大している企業だけに経営陣や従業員が受け取るインセンティブにも期待が持てる。