本日は、第二次納税義務に関するある裁決事例を読んでみたところ、非常に参考になり、「これ、実際のM&Aでも関係あるケースがあるんじゃない?」なんて思ったので、ご紹介します。
裁決の要旨は、
国税不服裁判所 第二次納税義務 受けた利益額の算定にあります。
http://www.kfs.go.jp/service/MP/11/0303070000.html...
裁決の詳細は、
国税不服裁判所 事例(平成27年10月28日裁決) にあります。
http://www.kfs.go.jp/service/JP/101/09/index.html
[前提の事実の概要]
まずざっくりと私なりの理解を書いてみます。ある程度デフォルメしているのはご容赦ください。
① 税金を滞納しているJ社は業績悪化のため、新設分割により、100%子会社であるK社を設立し、K社に主要事業を承継させた。
② 国税は滞納されている税金を徴収するため、K社の株式を差し押さえて、公売することを伝えた。
③ J社は国税に金額を提示し、K社を買い取りたい旨申し出た。(公売では第三者の介入により、K社の経営が混乱を招くと主張)
④ J社側からの申出を受けた国税は、K社株式の鑑定を外部の株式評価の専門家(公認会計士)に依頼。その評価方法は「時価純資産法」及び「DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)」の併用であり、③のJ社からの申出額よりも鑑定額の方が高いため、申出には応じられず、公売する方針であることを伝えた。(裁決事例では具体的な金額の公表はされていません。)
⑤ 国税に公売されたくないK社は、J社の社長であるA氏に、新株発行(第三者割当)増資をした。(国税を滞納しているのはあくまでもJ社であって、A氏個人には国税の滞納がありません。J社の代表者であるA氏に第三者割当増資を実行すれば、仮にJ社が所有するK社株式が公売にかけられても、A氏が大株主で残れる、ともくろんだようです)
⑥ 第三者割当増資を受けて国税側は公売を中止。その代わり、A氏に「国税徴収法39条」の「無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務」があるものとして、「国税徴収法32条1項」の「第二次納税義務者」と認定。A氏に「受けた利益」の範囲でJ社滞納税金の納付を納付するよう処分をした。
ここまでが事実のまとめ(私の理解)です。