中国企業の経営者を紹介するシリーズ。今回は、ハイアール・グループの創業者で、現CEOの張瑞敏(チャン・ルエミン)。日本では、三洋電機が白物家電(冷蔵庫・洗濯機)事業の子会社などをハイアールに売却したことから、その名前を知った方が多いのではないだろうか。

破産寸前の冷蔵庫工場の立て直しを任される

張瑞敏は1949年、山東省で生まれた。彼の両親は地元の縫製工場で働いていた 。張瑞敏も同じように、工場で働き始めた。「青島家電公司」という会社に入社すると、工場の一従業員からスタート し、チームリーダー、主任、工場長まで上りつめる。

 1984年、張瑞敏が35歳の時に、ハイアール・グループの前身である「青島冷蔵庫本工場(青島電氷箱総廠)」の総工場長に任命される。当時、青島冷蔵庫本工場は破産の危機に瀕していた。張瑞敏は西ドイツ(当時)から、 冷蔵庫の製造技術を持ち帰っており、工場の立て直しを任された。

工場長に就任した張瑞敏がまず手を付けたのは 、従業員の意識改革だった。当時の工場は、低操業にあえいでいた。操業日であっても、従業員が働かず、生産ラインが止まっているというような状況だったという。 

全従業員の前で不良品をハンマーでたたき壊す

1985年、有名な「事件」が起こる。生産ラインで発生した76台の不良品を全従業員の前に並べ、ハンマーで壊したと言われている。この際、張瑞敏は 次のような台詞を放ったとされる。

 「これまで品質管理を徹底してこなかった。そのため、こんなに多くの不良品 を作ってしまった。その責任は私にある。だから、私の給料をカットする。だが、今後、不良品が出たら、それは君たちの責任だ。さあ、このハンマーで冷 蔵庫をたたき壊すんだ」

この衝撃的な事件を境に工場が変身し始める。製造した冷蔵庫の品質が次第に認められるようになったのだ。1987年に社名を「ハイアール」に変更。1991年に「ハイアール・グループ」を設立し、張瑞敏は総裁に就任した。



「全社員がCEOであるべき」

ハイアールはしばしば、典型的な中国企業と様相を異にするといわれる。これは張瑞敏によるところが大きい。張瑞敏の持論の一つは「ハイアールの社員は全員 がCEOであるべき」。社員一人ひとりに 「説明責任」を求めているのだという。

一人ひとりが個人事業主のように働けば、周りの社員との協働が不可欠となる。社員から競争意識と協調性を引き出すことにつながっているのだ。

 ハイアールは1984年に前身の青島冷蔵庫本工場時代に総工場長に就任して以来、7年ごとに経営戦略を掲げ、事業モデルの革新を行ってきたと指摘される。

ブランド構築(1984〜91 年)、多角化戦略(91〜98年)、国際化戦略(98〜2005年)、グローバル・ブランド戦略(06〜12年)、ネットワーク化戦略(12 ~19年)である。 

ハイアール・グループは現在、冷蔵庫からエアコン、洗濯機などの白物家電、パソコンなどのデジタル機器を生産・販売している。世界100カ国以上で事業を展開し、上海と香港の証券取引所に上場する。2018年の全世界での売上高は約12兆 8800億円(約1833億人民元)。 

変革し続けるハイアール

最近、張瑞敏はインターネット時代における大企業の変革の必要性について語っている。官僚制に代表される伝統的な経営モデルは時代遅れであるだけでなく、すでに使いものにならなくなっていると言っている。現在のユーザーは個々にカスタマイズされた商品を求めているにもかかわらず、従来の製造・組立ラインでは大量生産による商品しか提供できないためだ。

また、かつては消費者と生産者の間に情報の非対称性があったが、インターネッ トの普及で今や情報の主導権はユーザーに握られており、大企業の仲介を排除する方向であるとも述べている。このような時代の要請に常にキャッチアップするために、 ハイアールはどう変化し続けていくのだろうか。 

文:M&A online編集部