大企業はもとより、中小企業でもサービス向上のためのマナー研修やコミュニケーション研修、専門技術向上などの社員教育は実施する。だが、売り上げを伸ばすには、それだけでは不十分。仕事がおもしろい、職場が楽しい、会社が大好き、お客様に喜んでいただきたいと考えるような社員を増やさなければならない。

人材育成・研修の会社マリン(東京・神田)代表の中昌子さん(59)は「わくわく」というキーワードで企業の活性化を図るコンサルタント。人のために働く喜びを感じ、顧客満足・顧客感動を生み出すことができる「わくわく社員」を全国の企業に「増殖」させる活動に取り組んでいる。

パート従業員が3年で店長

何かに期待してドキドキしたり胸が膨らむことをわくわくという。物事がいい方向へいっていることを示す言葉で、悪い状態に陥っている時はわくわくすると言ったりしない。中さんは、人をわくわくさせ自らわくわく仕事をする社員を増やしていこうと、人材育成プログラム「わくわく社員増殖プロジェクト」を展開している。

福岡県出身。新卒で新日本製鉄(現日本製鉄)に就職。3年半後に退社し、夫の転勤で首都圏の町に移住。16年間専業主婦を送ったが、39歳の時、子供の学費を稼ぐために近所のスーパーに働きに出た。ここまではよくあるパターンだが、ここから先がユニーク。

「ある日、些細なことをして差し上げたお客様から、ありがとうって満面の笑みをいただいたんです。その日からバチッとスイッチが切り替わって。任された仕事をやるだけではなく、何をしたらいいのかと自分で考えるようになり、お客様に喜んでもらうために従業員が笑顔で働ける仕組み作りを始めたんです」

スーパーでは価格も重要だが、店員の目に見えないサービスや接客態度はもっと重要だ。いくら新鮮な野菜や魚を並べても、従業員が全員暗い顔をしていたら客は寄りつかないだろう。中さんの取り組みが予想外の効果をもたらし、なんと3年で店長に抜擢され、来客数が3倍、売り上げが3倍になったという。

これをきっかけに、企業から接客やリーダー研修をやって欲しいという依頼がくるようになり「専業主婦だった私も、こうやって可能性が広がるんだということで、ちょっとうれしくなって」独立。2003年に人材教育・研修の会社「マリン」を設立した。

専業主婦からスーパーのパート従業員、そして経営コンサルタントへと華麗な転身。「三段跳び」のような人生だ。(次回は5月21日掲載)

文:大宮知信