M&Aを行うためには、M&Aアドバイザーとの契約が必要です。契約締結後、M&Aアドバイザーは、どのように買手候補探しを始め、どのようなプロセスを進めていくのか、今回はこの点を見ていくことにします。

買手候補探しには時間を要する

M&AアドバイザーとのFA(ファイナンシャル・アドバイザー)契約後、まず、M&Aアドバイザーから売手側企業に、直近3〜5年ほどの財務諸表(決算書)や会社案内などの資料を求められます。財務諸表は「バリュエーション(企業価値算定)」を行い、おおよその売却可能額を把握するため、会社案内などの資料は、買手候補企業向けの「会社概要書」といった開示情報を作るためです。

M&Aアドバイザーは、これらの希望売却価格情報や開示情報を作成し、さまざまなルートで買手候補を探します。買手候補にふさわしい企業などを1件1件訪問したり、提携している金融機関や公認会計士、税理士などの専門家に依頼したり、また、ほかのM&Aアドバイザーからも案件を紹介してもらいながら、買手候補を探していきます。

第一段階で、買手候補企業を50社ほどまで集約し、第二段階で売手側企業と相性の良さそうな企業をさらに10社程度に絞ります。この段階でM&Aアドバイザーは、売手側企業名を公表、より詳しい内容の売手企業情報を開示します。そして最終的に2、3社にまで絞り込みます。

この後、M&Aアドバイザーを介して、売手側・買手側双方トップによる面談へと進みます。ここから買手候補企業を1社に決めると、その買手候補企業から「意向表明」というM&Aを行う旨の書面が提示され、はじめて「基本合意契約」の締結へと進みます。

このように、M&AはM&Aアドバイザーと契約しても、すぐに売手企業が望む買手企業が見つかるものではないのです。一定のプロセスに沿って買手候補を探し、徐々に絞り込みをしながら1社の買手企業を決めていくものなので、相当な時間がかかるということを理解しておかなければいけません。

M&Aアドバイザーを介した買手候補探しの中で重要なものが、先のも述べた「バリュエーション」と買手候補への開示情報です。以下、これらについて少し触れておきます。

バリュエーションによる希望売却価格

バリュエーションとは、売買対象の売手企業がいくらで売れるかという、売却価格のベースとなる数値を出す作業です。売手企業では、このバリュエーションによる数値を参考にして、おおよその希望売却価格を出します。

ノンネームシートは、売手企業が最初に開示する自社についての情報で、簡単な企業概要書です。秘密厳守と明記した上で、事業内容、営業拠点、従業員数、自社の事業の特徴、売却理由などを記します。また、希望条件としてM&Aのスキームや希望売却価格を、そして財務状況として直近3年分の売上高、経常利益、その他の注意事項などを記します。

ネームクリアとIMで売手企業の詳細を開示

このノンネームシートで関心を示した買手候補企業を、10社程度に絞ったのち、売手企業名の公表(ネームクリア)とIM(インフォメーション・メモランダム)という詳細な売手企業情報を開示します。その後、より関心を示した数社とトップ面談、そして交渉へと進んでいきます。 

中小企業などのM&Aで最も重要なことは、自社を理解してくれる買手企業を探すことです。時間がかかっても相性の良い企業を見つけることです。そのためには、まず自社とのマッチングの良いM&Aアドバイザーと契約することが大切です。

文:特定行政書士 萩原 洋