志気を鋭く保つこと、つまり心が大事、というのは佐藤一斎の基本的な姿勢ですが、『言志後録』でははじめて「心学」という表現が出てきます。たとえば、「時には自然に親しめ」(66)で、「時に蒼奔(そうぼう)の野に行く可し。此れも亦心学なり」の記述があります。大自然に触れて英気を養うことも、心を育て、志気の鋭さを保つ秘訣でしょう。
心学については西郷隆盛が選んだ101条でもある次の言葉があります(なお西郷はこの言葉のうち、半ばにある「孟子は」以降のみを選んでいます)。
読書も亦心学なり。必ず寧清(ねいせい)を以てして、躁心(そうしん)を以てする勿れ。必ず沈実(ちんじつ)を以てして、浮心(ふしん)を以てする勿れ。必ず精深(せいしん)を以てして、粗心(そしん)を以てする勿れ。必ず荘敬(そうけい)を以てして、慢心を以てする勿れ。孟子は読書を以て尚友(しょうゆう)と為せり。故に経籍(けいせき)を読むは、即ち是れ厳師父兄の訓(おしえ)を聴くなり。史子を読むも亦即ち明君、賢相、英雄、豪傑と相周旋するなり。其れ其の心を清明にして以て対越せざる可(べ)けんや。(『言志後録』144読書もまた心学)
●読書は心を整える
読書は心を整えるための学びである。読書をするときは、心を安らかにし、騒がしくしないこと。落ち着いて、浮つかないこと。深く詳しく読み、粗雑に読み飛ばさないこと。慎んで読み、慢心せずに読もう。孟子も、読書によって古人を友としていた。古い賢者の本を読むことは、厳しい先生や父兄からの教えを受けるのと同じだ。歴史書を読めば、明晰な君主や賢い宰相や英雄、豪傑たちと語らうことができる。心をクリアにして、そうしたスゴイ人たちとしっかり対峙して読むことだ。
いま会える人と会うこと。虚心坦懐に話をする、話を聴くことも大事ですが、心をさらに強く高い次元へと整えていくためには、時空を超えて古今東西の優れた書物と向かい合うことだというのです。それが志気の鋭さへつながるのです。
多くの人が人生を振り返るとき、「出会い」をターニングポイントとしています。恩師との出会い、感動的な作品との出会い、友人との出会い、そして書物との出会いもあるでしょう。その出会いがなければ、いまの自分はなかった、とさえ思う人もいるはずです。
ネット社会となり、リモートでの会議やSNSでの意見交換も多い昨今ですが、より心を豊かにする出会いとして読書を活用してみるのもいい方法ではないでしょうか。
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