今回は、フォックスコン(鴻海科技)の創業者である郭台銘(テリー・ゴウ)を紹介する。

フォックスコンは、台湾に本社を構え、工場は主に中国にある。現在では、パソコンやスマートフォンなど電子機器の受注生産(EMS)で世界最大級の企業グループを形成する。

シャープ買収で日本でもその名が一躍広まる

その中核企業は鴻海(ホンハイ)精密工業で、1974年に台湾で創業した。その名が日本でも一気に知られるようになったのが2016年。鴻海が経営不振に陥っていた日本の大手家電メーカー、シャープを買収したのだ。当時、陣頭指揮したのは鴻海会長の郭台銘。EMS企業が完成品メーカーを傘下に収めたことでも注目を集めた。

シャープ買収をきっかけに、「鴻海(ホンハイ)」あるいは「フォックスコン」という名前を知ったという人が多いに違いない。

鴻海はEMSという業態であることから、もともと、一般消費者になじみがある企業ではなかったが、2010年頃からのスマホの爆発的な普及とともに、その存在に関心が高まっていた。とりわけ、米アップルの「iPhone」を受託生産する会社ということで有名になった。

郭台銘は1950年、台湾北部の新北市で生まれた。父親は中国の山西省生まれで、後に台湾に移民した。1966年、郭台銘は台北市の台湾海事専科学校(現在の台北海洋技術学院)に入学する。大学を卒業して兵役を終えると、1971年、当時台湾で三大船会社の一つだった復興航運会社に就職した。

1974年に「鴻海プラスチック有限公司」設立

しかし、その会社を1年ほどで辞めると、自分の会社を立ち上げるべく、準備を始める。1974年、郭台銘は「鴻海プラスチック有限公司」を設立する。その名前の通り、プラスチック製品を生産する会社だった。

当時、台湾では白黒テレビの製造が始まった頃。郭台銘は白黒テレビのチャンネルに使われる部品の製造を手がける。この時期、会社はまだ小さく、従業員は15人ほど。

会社は徐々に利益を出し始め、設備投資を加速させた。日本から設備を購入し、新しい金型工場などを立ち上げる。1980年代になると、世界はコンピューターの時代に突入し、金型工場への投資が生きることになる。郭台銘はコンピューター部品の製造を重点的に行い、低価格競争を制し、やがて台湾市場を独占するようになっていく。

1982年、会社を「鴻海精密工業」に改めた。この時期、郭台銘はコンピューターのケーブル製造設備への投資を行っている。1985年には、アメリカに支店を設立すると、海外市場に打って出る。

photo by:Ken Marshall

「フォックスコン」ブランドを立ち上げ

同年、フォックスコン(FOXCONN)のブランドを創立すると、1988年には、深圳にフォックスコンの工場を立ち上げ、コンピューター周辺機器の生産に乗り出す。2002年には、鴻海グループの営業収入は、台湾の製造業のトップに躍り出た。

その後、2008年、個人名義の財産の内、9割を公共のために寄付している。また、2014年には、父親の故郷である山西省に電気自動車産業の投資を行うと発表した。

総統選出馬を見送り

郭台銘は、2020年台湾総統選挙への出馬を表明し、その際、鴻海の会長職を辞した。しかし、野党内の予備選で敗れ、最終的に出馬を見送った。鴻海の今後の展開とともに、傑物・郭台銘にも大いに注目していきたい。(敬称略)

文:M&A Online編集部