経営者に経営ノウハウや戦略を指南するコンサルタントは、顧客が自分たちで考え行動するように導き、成果を効果的に創出出来るようにするのが役割。だが、コミュニケーションがうまくいかず、行き詰まりを感じている人も少なくない。資産工学研究所の坂本善博所長(68)は「ナレッジファシリテーション」(知識の表出)技法の普及に取り組んでいる。

時間の活用法や生産性向上、集中力や能力アップなど、個人や組織のパフォーマンスアップに役立つビジネスナレッジを伝えるセミナーを開催。「知識の管理」を経営に役立てるというと、何やら難しそうなマネジメント手法のようだが、いったいどんなものか。東京・麹町の事務所を訪ねた。

独立は読書体験がきっかけ

資産工学研究所から定期的に送られてくるメルマガ「サクセス通信」の中に、「人生100年時代を楽しく生きるための人生創造術」というのがあった。経営者ではなく、個人のビジネスパーソンが対象のセミナーなのか。狙いについて坂本所長が語る。

「自分の人生を考える人たちを対象に、BtoC(消費者向けビジネス)の講座もやろうということで、経営者、マネージャー、プロジェクトリーダー、営業マン、コンサルタントなどの個人を対象に、それぞれ少しずつ切り口を変えて教えています」

名刺に記された肩書きは「サクセス・ソリューション・コンシェルジュ」。社内の知識や経験を「見える化」する「ナレッジファシリテーション」の技法を開発した。いわば「知恵の案内人」。

今回の「人生創造講座」は「会社の指示で来る人ではなく、自腹で受ける人たち」が対象で、受講料は2万円。2回に分け、1回目は理論編で、2回目は自分の人生設計書を作成し、それをレビューしながら時間力や生産力など個別テーマの深掘りをする。

1972年、東大文系の出身だが、ゼミが「経営とコンピューター」で、プログラムを作ったりしていたという。IT大手の富士通に入社し、システムエンジニアに。「仕事は技術指導が中心で、新製品が出ると、お客さんに使い方を提案したり教えたりという仕事が大半でした」

起業のきっかけは読書体験。40歳くらいになったとき、本を読んでも内容を覚えていないことに気がついた。「これはまずいなと。そこで本一冊を2ページ程度に要約し、線を引いたところを抜き出してまとめ、後で読み返すようにした。そうすると、えらいすっきりと頭に入る」

当時、富士通のワープロ・オアシスが出た頃で、本を読んだ後にこの最新兵器を使って大事な要点を見開き2ページにまとめると、純度の高い知識が残った。それがナレッジ(知識)の「見える化」というわけだ。「これは使えるな」と起業への意欲が頭をもたげた。

1994年に地図の出版社、昭文社の専務に就任。地図の電子化商品開発に携わったが「会社の中だけではやりたいことが発揮できない」と1998年に独立し、東京・麹町に事務所を構えた。(次回は6月18日掲載)

文:大宮知信