常に「食と健康」がベース

小さな流通研究所代表の鎌田定宗さんは、月の半分はコンサルティングや講演などで地方に出かける。クライアントは行政から農業団体、企業など様々だが、メインは産直・直売所や道の駅に関わる仕事。

「農家レストランも増えましたが、成功しているケースは少ない。直売所とレストランを併用した施設を作りたいという相談も多いですね」

農業流通の仕事に携わる前は、獣医として牛や豚の健康管理に取り組んでいた。そちらの仕事はリタイアしたが、獣医の経験が役に立つことはある。

「ある大手製菓会社が経営するホテルで、ミニブタとかウサギなどの小動物を飼えないだろうかという相談を受けている。売上拡大のために、ミニ動物園みたいな施設を作ってお客さんを呼び込もうという計画。いま具体的に検討しています」

鎌田さんの仕事の根底には、常に「食と健康」がある。獣医師の道から農産物の流通コンサルタントへと大きく路線を変えたが、目指す終着点は同じ。農家の利益を守ることが、消費者の「食と健康」を守ることになる。

人生半ばでの転身だったが「人との出逢いが増え、仕事の後仲間と酒を飲み、夢を語り合う。それが楽しい。おいしいものも食べられるしね」と笑顔になった。

独立して8年経った。収入はサラリーマン時代の倍になった。「あまりあくせくすることなく、自分が気に入った仕事だけやれればいい」と前置きした上で、今後の展望を語る。

「自分でも何か作りたくなりました。農業も含めて食事をするところとか、自分で作ったものを自分のアイデアで仲間と一緒にやりたいなと思います。また原点に戻って、牛飼いでもいいし豚飼いでもいいけど、ハムやソーセージを作ったり。私は食べることが好きなんですよ。いずれにしても食に関わることはずっとやっていきたいですね」

獣医時代は狭い地域の農家と農業関係者との付き合いしかなかったが、流通コンサルタントになってからは人脈が全国に広がった。そういう人とのつながりが一番の成功報酬だ。(おわり)

文:大宮知信