中国企業の経営者を紹介するシリーズ。今回は、蘇寧電器の創業者で、蘇寧グループ会長の張近東(チャン・チントン)を取り上げる。

蘇寧グループは、2011年に家電量販店のラオックスを傘下に収めたことで日本でも知られるようになった。16年には、イタリアのプロサッカーリーグ、セリエAを代表する名門クラブで、「インテル」略称で知られるインテルナツィオナーレ・ミラノを買収した。

ベンチャーブームが「起業」への背中を押す

蘇寧グループの名称の由来は、当初本社のあった場所が江蘇省南京市の江「蘇」路と「寧」海路の間に位置していたためとされる。

蘇寧グループの持ち株会社の名称は、もともと、蘇寧「電器」グループだったが、2013年に蘇寧「雲商」グループへと変更された。その後、18年に、蘇寧「易購」グループとなった。したがって、現在は蘇寧易購グループが正式名称となるが、本記事では略称として「蘇寧グループ」で統一する。

張近東は1963年、安徽省に生まれた。1984年に南京師範大学の中文学科を卒業すると、1984年から89年まで南京市鼓楼区工業総公司という会社で働いていた。

1980年代末から90年代初頭の中国では、改革開放という流れの中で、ベンチャーブームといえるような時代の雰囲気があり、若い張近東も、その時代の雰囲気と無関係ではなかった。張近東は、仕事以外の時間を使い、エアコンの設置工事を請け負い、将来の起業資金を貯めていたという。

“贅沢品”のエアコンに照準

当時、最も人気があり、最も儲かる商品は、家電製品であった。カラーテレビや冷蔵庫、洗濯機などは需要が供給に追い付かないような状況であった。しかし、この時、張近東は、周囲が驚く決断をする。当時はまだ「贅沢品」であったエアコンの事業に乗り出すという決断をするのだ。1990年、27歳の張近東は会社を辞め、事業立ち上げの準備に着手した。

1990年、張近東は兄とともに、10万元(現在のレートで約157万円)の自己資金で、200平方メートルの店舗を借り、エアコンを専門に卸売りする会社「蘇寧交家電」を創業する。この店舗は、繁華街からは遠く離れた場所にあり、当時、この小さな店舗が数十年後に中国屈指の家電チェーン店になるとはだれも想像していなかったという。

この後、兄弟は会社を分割し、張近東は、家電販売店舗を経営することになる。張近東は同年、「蘇寧電器」を創業し、いよいよ総合家電業界への参入を果たす。張近東は、チェーン店を展開し、中国全土へと蘇寧電器を広げていく。

2004年には、蘇寧グループは深圳証券取引所に上場した。蘇寧グループは中国国内家電企業初の上場企業となった。