企業経営はAI(人工知能)で激変するかもしれないというのに、いまだに「経験と勘と度胸」に頼る経営者が少なくない。これまで日本の企業を支えてきた阿吽の呼吸、以心伝心による意思決定の早さを前提にした仕事のやり方、旧来のITシステムはもはや役に立たないどころか、多様性が重視されるグローバル経営の中では阻害要因になる。中澤会計情報システム研究所代表の中澤進さん(70)は、グローバル化における会計システムの問題を解決する専門家。製造業、流通業を問わず経理・財務部門の業務改革、管理会計分野でのコンサルティングや会計システムプロジェクトの普及に取り組んできた。

原子力から会計の世界へ

企業を取り巻く環境が大きく変化しつつある。すべての分野でグローバル化への対応が求められ、新たな価値観で企業運営へシフトしなければいけない状況だ。にもかかわらず、未だに過去の価値観や経験、勘に頼る予算管理から脱却できない企業がある。中澤さんは企業に対して、会計関連ITシステム導入のコンサルティング活動を展開している。

九州大学で原子力工学を学んだ。友人たちは「原子力村」に行ったが、中澤さんは日本IBMに就職した。20年近く九州エリアの営業所に勤務し、中小企業を担当。1995年から東京本社へ転勤となり、経営管理・会計関連業務改革、会計経営関連ITシステム導入のコンサルティングに従事。

きっかけは40代半ばに襲ったリストラの嵐。ご承知のようにIBMはパソコン市場に出遅れ、得意としていた大型コンピューターは最も成長性のない分野となってしまった。多くの仲間が割増退職金を手にして会社を去った。中澤さんはその対象にはならなかったが、新しい食い扶持を探さざるを得なくなった。

2002年I0月、社内ベンチャー的に立ち上げた「会計コンサルティングチーム」とIBMが買収したPwCコンサルティングが合併統合、新しくスタートした「IBMビジネスコンサルティングサービス」の取締役ファイナンシャルリーダーに就任。営業の最前線から後方部隊の会計部門に移ったことが大きな転機となった。お金を使いまくる立場から、お金の出し入れをチェックする役回りに就いたようなもので、180度の転身だ。

2006年12月に退職。「IBM以外のところで、自分の考えをストレートにクライアントにぶつける仕事をやってみたい」と翌年1月、中澤会計情報システム研究所を設立した。(次回は7月2日掲載)

文:大宮知信